【7月5日 AFP】雨の日曜日の朝、メキシコの首都メキシコ市(Mexico City)のある地区で傘を差して列を作っていた人たちの足元には、空の牛乳パックやペットボトル、段ボールが詰まった袋が置かれていた。

「交換市場」を意味する「メルカード・デ・トゥルエケ(Mercado de Trueque)」の熱気を雨足がそぐことはなかった。ここでは、再生可能な物を持っていくと、自然食品や有機製品を買うことができるポイントに交換してくれる。

 写真家のマリア・フェルナンダ・バスケスさんは「どう始末したらいいか分からなかったから、すごく助かる。ただ捨てるだけっていうのは無責任だと思うし」という。一緒に並んでいた友人のミナ・モレノさんは「母なる地球に少しは恩返ししないと」と語った。

 メキシコ市は20年前には世界で最も汚染された都市とみなされていた。「メルカード・デ・トゥルエケ」は、このスモッグに覆われた人口2000万の大都市を美化しようと、首都を率いる左派系の連邦区政府が近年立ち上げた環境キャンペーンの一つだ。

 昨年始まった月に1度の「交換市場」は、ごみとなって終わってしまう物の価値や使い道を意識してもらおうという取り組みで、1日1万2000トン以上のごみが出るメキシコ市で人気を集めている。市場に持ち寄られた再利用可能な資源はエプロンをしたボランティアたちによって重さが計られ、その後、待機しているトラックに山積みにされて地元のリサイクル企業へと運ばれていく。

 市場に来た人たちは、持ち寄った資源の重さに応じた「ポイント」がもらえる。このポイントを使って、隣接する市場で食品や日用品を買うことができる。再生できるごみを持って来て、手ぶらで帰る人はいない。1968年メキシコ五輪の際に選手村があった敷地内にある施設に、新聞紙とペットボトルを持って初めて来たというカップルは「ダイコンとカッテージチーズを買って、まだ40~50ペソ(310~390円)余った」と喜んでいる。

■生産物は全て市が買い上げ

 地元の生産者たちにとっても有益だ。生産したものは全て連邦区政府が買い上げてくれる仕組みで、買い上げられた生産物はこの「交換市場」にやって来る。カリフラワーの屋台で番をしていた生産者のペドロ・ヒメネスさんは「通常の市場価格よりも高い値で連邦区政府は買ってくれるので、自分たちにとっていいことだ」と話す。

 この取り組みによって昨年は17万トンを超える再生可能な資源が集まった。メキシコ市内を巡回して開かれている「交換市場」には毎月2000人以上が訪れる。「たくさんの人が来ている。この市場の狙いは、ごみにも価値があること、ごみを分別することを皆に理解してもらうこと」と連邦区政府職員のリリアナ・バルカサルさんはいう。「これでメキシコ市のリサイクル問題が解決するわけではない。それはとても複雑で、『交換市場』の需要は毎月増えている」(c)AFP/Deborah Bonello