【6月17日 AFP】米国横断飛行に挑戦中の有人ソーラー飛行機「ソーラー・インパルス(Solar Impulse)」が16日未明、首都ワシントンD.C.(Washington D.C.)近郊のダレス国際空港(Dulles International Airport)に着陸し、米横断飛行の最後から2番目の区間を終了した。主催者が発表した。

 ソーラー・インパルスは単座で、63メートルの翼長に搭載された太陽電池(ソーラーセル)1万2000個を動力源として飛行する。

 ダレス空港には16日午前12時15分(日本時間午後1時15分)ごろ着陸。空港への着陸は、航空便の離着陸が少ない夜間に行われるのが一般的だ。

 操縦士はスイス人のベルトラン・ピカール(Bertrand Piccard)氏だった。米横断飛行での操縦は、1飛行区間ごとに同氏とチームメイトのアンドレ・ボルシュベルク(Andre Borschberg)氏が交代で行っている。

 ピカール氏はワシントンへの着陸直後、非常に満足できるフライトだったとコメント。「簡単に見えるかも知れないが、これは膨大な作業の結果だ」と語り、ソーラー・インパルスの開発や、過去と現在の気象記録の分析など、10年間にわたる努力の積み重ねがあった点を強調した。ただ同氏は、再生可能エネルギーの利用で「信じ難いことが達成できる」ことを今回の飛行が証明したと述べ、ソーラー・インパルスは「効率と信頼性が高く、燃料なしで昼夜飛行が可能」だと誇った。

 ソーラー・インパルスは約2週間ワシントンにとどまり、スミソニアン国立航空宇宙博物館(Smithsonian Air and Space Museum)の別館「ウドバー・ハジー・センター(Steven F. Udvar-Hazy Center)」で一般公開される。米国横断飛行の終着点はニューヨーク(New York)だ。

 ソーラー・インパルスは高度8230メートルに達することで夜間飛行が可能。この高度に到達した後は、電気消費量をほぼゼロにしながら日の出まで徐々に高度を下げ、太陽が昇ると太陽電池が再び充電される。

 中西部のオハイオ(Ohio)州シンシナティ(Cincinnati)からの飛行時間は約14時間で、出発前には天候不良のため14時間足止めされた。

 当初の計画では、ミズーリ(Missouri)州セントルイス(St. Louis)からワシントンに直行する予定だったが、強い横風や向かい風で飛行速度が低下。このためワシントンまで飛行した場合、狭いコックピット内の操縦士に配慮して24時間に設定した飛行時間の上限を超える恐れがあった。

 ソーラー・インパルス・プロジェクトは、ピカール氏とボルシュベルク氏が立ち上げと主導を担い、化石燃料を使わずに何を達成し得るかを示すことが目的。最終目標は2015年の世界一周飛行だとしている。

 米国横断の最初の飛行は5月3日に始まり、カリフォルニア(California)州サンフランシスコ(San Francisco)からアリゾナ(Arizona)州フェニックス(Phoenix)までの区間をピカール氏が操縦した。中西部でセントルイスに立ち寄ったのは、プロペラ機「スピリット・オブ・セントルイス(Spirit of St. Louis)」でニューヨークからパリ(Paris)までの単独無着陸飛行に初めて成功したチャールズ・リンドバーグ(Charles Lindbergh)に敬意を表すためだった。(c)AFP