【6月1日 AFP】世界で最も多様な海洋生物が生息する海域の1つ、フィリピンのベルデ島海峡(Verde Island Passage)に、サンゴの天敵オニヒトデが繁殖し始めたと、フィリピン政府が31日、明らかにした。

 長さ100キロメートル、幅20キロメートルのベルデ島海峡は、海洋生物学者たちから世界の海洋生物多様性の「中心中の中心」と呼ばれてきた。この海峡を頂点とする「コーラル・トライアングル(Coral Triangle、サンゴ礁三角地帯)」は、インドネシア、パプアニューギニア、東ティモールへとまたがって広がり、その豊かな海洋生物の存在のために「海のアマゾン」と呼ばれている。

 ダイバーたちに人気のこの海峡について、環境学者たちは以前から、汚染と乱獲で重大な危機下にあると警告している。さらに同海峡は、石油や化学品の輸送船が毎日行き交うフィリピンで最も交通の激しい海路の1つとなっている。

 フィリピン野生生物局の職員によると、4月から2回行われたダイビングで、少なくとも500平方メートルのサンゴがヒトデによる被害を受けたことが分かっているが、被害の全容を知るのに十分な数のダイバーがいないという。ヒトデの駆除にはダイバーが金属トングで1つ1つ拾い上げ、海岸に持ち帰って埋めるという骨の折れる作業が必要だ。

 オーストラリア政府は3月、140万ドル(約1億4000万円)以上を投じて世界遺産のサンゴ礁グレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)から6万匹のヒトデを処分したと発表している。(c)AFP