【5月31日 AFP】風を受けて巨大タービンが回る光景を見ることは、アフリカ大陸ではほとんどない。だが、それも近いうちに変わるだろう。

 これまでアフリカの風力発電に対する投資額はわずかで、ほぼ全額が地元政府と援助国の資金負担によるものだった。しかし専門家によれば、状況は急速に変わりつつある。アフリカ大陸を縦横に走る送電網を構築するプロジェクトに民間の投資家たちは金儲けのにおいをかぎ取っており、間もなく新たな風力タービンが林立すると予想されている。

 現在、アフリカの風力発電量は1.1ギガワットで、総発電量のわずか1%を占めるにすぎない。仮に検討中の全計画が実現すると、発電容量は10倍になる。アフリカ開発銀行(African Development BankAfDB)のエコノミスト、Emelly Mutambatsere氏は指摘する。「進行中と計画中のプロジェクトを調べれてみれば分かるが、資金の半分以上が民間投資だ」

 投資の水門をこじ開けたのは、電力市場の自由化だ。「今もなお多くの国で、政府が大きな役割を担っている。それでも、一部の国々では一定レベルの自由化が実現した」(Mutambatsere氏)

■風力タービン建設続々、急成長する市場

 率先して風力発電を導入したのは北アフリカのエジプトやチュニジア、モロッコなどだ。サハラ以南の各国も後を追う。アフリカ地域初の商業風力発電所は今年、エチオピアで稼働を開始した。発電能力は52メガワット。また、大陸最大の温室効果ガス排出国である南アフリカでは、風力事業が驚異的な成長を見せている。

 石炭の豊富な南アフリカは、風力などの再生可能エネルギーを活用して発電能力を18ギガワット拡大しようと必死になっており、初めて発電事業への民間の参入を認めた。南ア・エネルギー省によると、最初の入札では28件のプロジェクトに50億ドル(約5000億円)の投資が集まったという。

「南アフリカは、風力と再生可能エネルギーの一大ブームを迎えている」と語るのは、南アフリカ風力発電協会(South African Wind Energy Association)のヨハン・ファンデンベルク(Johan van den Berg)最高責任経営者(CEO)だ。「南アフリカにはこれまで風力タービンが8基しかなかったが、現在、250基が建設中だ」

 同CEOによると、南アフリカの再生可能エネルギーへの投資額は昨年、2万%増加したという。

 一方、ケニアでは発電能力300メガワットのトゥルカナ湖風力発電プロジェクト(Lake Turkana Wind Power Project)が11月に着工する見込みだ。総工費8億1500万ドル(約820億円)の大事業。風速11.8メートルの風に恵まれた立地に、「夢の計画だ」と責任者は胸を張る。

■民間投資流入、背景に欧州市場の不振

 再生可能エネルギー・コンサルタント会社「3E」のリチャード・ドイル(Richard Doyle)氏によると、欧州など主要なグリーンエネルギー市場の厳しい状況が、投資家たちの目をアフリカに目を向けるきっかけとなった。途上国市場で約束される健全な利益も魅力となっている。「欧州の企業が、雪崩を打って国内市場から途上国へと流れ出している。その中心地の1つがアフリカだ」

 だがドイル氏は、「ブーム」というレッテルを張る前に他地域の現状を認識するべきだと指摘する。「欧州市場がここまで厳しくなければ、アフリカにこれほど多くの企業が進出しただろうか。ほぼ間違いなく、進出していないだろう」

 国際風力発電評議会(Global Wind Energy Council)のスティーブ・ソーヤー(Steve Sawyer)事務局長は、不安定な投資の流れをなだらかにする上で大きな役割を果たすのは常に公的融資だと指摘した上で、各国政府内でも「持続可能なエネルギーシステム構築には、かなりの民間投資が必要」だということが理解されつつあると述べた。

「そうした大規模な民間投資を得るには、投資リスクを抑え、プロジェクトに投資しても良いと投資家に思わせる政策環境を作らなくてはならない」(ソーヤー事務局長)

■2030年のアフリカ、風力発電は2%ほど

 2011年時点で世界市場にアフリカと中東が占める割合は、わずか0.1%。アフリカ大陸はまだ、世界に追いつこうとしている段階だ。多額の先行投資が必要な風力発電が、安価な石炭やガスなどのエネルギー資源に置き換わるには当分かかるだろう。

 国際エネルギー機関(International Energy AgencyIEA)は、2030年までにアフリカの総発電量のうち風力が占める割合はせいぜい2%程度と見積もっている。トップは依然として石炭(37%)で、ガス(32%)が2番手につけているという推計だ。

 それでも、AfDBのMutambatsere氏は言う。「風力は主要な電力源にはならないだろうが、エネルギーミックスで重要な役割を果たす存在になるだろう」 (c)AFP/Justine GERARDY