【4月9日 AFP】「パンダとピノ(ワイン用ブドウ)、どっちが大事?」――近い将来、動物保護活動家とワイン生産者がこんな選択を迫られることになる。気候変動により、ワイン用ブドウを栽培するのに適したより冷涼な土地を探す動きが活発化する一方で、その候補地が希少動物の生息地と重なってしまう恐れがある。8日刊行の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に掲載された論文で発表された。

 気温上昇に伴い、世界の大手ワインメーカーはすでに、欧州の地中海地方やオーストラリア、米カリフォルニア(California)といった名産地以外でのブドウ栽培を考えることを余儀なくされる中、より北方に注目している。

 しかし同論文を執筆した研究者によると、従来の世界の主要なワイン生産地におけるブドウ栽培の好適地が2050年までに25~73パーセント減少するという予測もあり、そうなれば水源や野生生物の生息域とブドウ栽培地とが競合しかねない。

 中でも特にブドウ栽培好適地の激減が心配されるのは、フランスのボルドー(Bordeaux)地方やローヌ(Rhone)地方、ならびにイタリアのトスカーナ(Tuscany)地方だ。これに対し、今後ブドウ栽培地の増加が見込まれるのは、北米西部と欧州北部だ。

 同時に、ワイン生産量が世界で最も急速に伸びている中国では、この変化がパンダの元来の生息地を脅かす懸念があり、同国がどう対応していくかが問題視されている。

 同論文の主著者リー・ハンナ(Lee Hannah)氏は、「中国では皮肉なことに、全ワイン最適地が偶然にもパンダ生息地内にある」と指摘。中国産の欧州風ワインの大半は、今のところ北京(Beijing)に近い半島で生産されているが、ハンナ氏によると、パンダ生息地をワイン生産者から保護する措置をとるよう、動物保護活動家が中国政府に求めているという。(c)AFP