気候変動で変わるワイン名産地
このニュースをシェア
【3月27日 AFP】2050年ごろ、人々はスウェーデン家具イケア(IKEA)の店に立ち寄り、スウェーデン産の高級ワインを購入している。
これは北欧流のファンタジーだろうか。いや違う、と気候専門家らは語る。地球の温暖化によって、すでにさまざまな変化がワインの世界に起きているのだ。
■変わるワインのスタイル
ブドウ栽培の新たな農地が開拓される一方で、一部の伝統的産地の将来は、気温上昇と長引く干ばつに脅かされている。
そしてその二つの極端な気候の間で、長い期間をかけて構築されてきたワインのスタイルが、変化を強いられている。かつて軽くてすっきりしていると定評のあった白ワインの一部は、よりふくよかで香り高くなり、ミディアムボディの赤ワインは重量級のフルボディに変わりつつある。
「警鐘を鳴らす人騒がせな人もいるが、私は楽天的でありたいね」と語るのは、ワイン学の研究者でスペイン・タラゴナ(Tarragona)にあるロビラ・イ・ビルジリ大学(Rovira i Virgili University)教授のフェルナンド・サモラ(Fernando Zamora)氏だ。「伝統の地域にもワイン畑は残る。このことには疑いを持っていない。しかし、新たな戦略も考えなければならない。そして新たなブドウ園地帯もできるだろう。それは間違いない」
「すでにドイツでは良質な赤ワインが作られている。かつては極めて困難だった場所だ。それにデンマークでもワインを作り始めた」
■比較的涼しい地域に注目
ワイン業界に協力している世界各地の気候学者らは、2050年までに気温が1~2度上昇すると予測している。また同時に異常気象の回数も増えるとみられている。
北欧での新たなブドウ園プロジェクトは、天候の予測不能性が高まっていることや、たった1回の寒波でもブドウがすべて台無しになってしまうことを考えると、リスクが高いだろう。故に、最も大きな変化が訪れるのは、近年まで特定のブドウ品種を作るのに苦労していた地域で生産されるワインの種類かもしれない。
恩恵を受けるとみられるのはタスマニアやニュージーランドの一部、チリ南部、オンタリオ(Ontario)などのカナダの一部地域、英イングランド、ドイツのモーゼル(Mosel)やライン(Rhine)地方などだ。
「30~50年前には寒すぎてブドウの収穫ができなかったのが、現在では比較的寒冷程度の気候になり、当時よりも(ワイン生産に)適するようになった地域なら、世界中どこでも良いだろう」と、南オレゴン大学(Southern Oregon University)のワイン学教授、グレゴリー・ジョーンズ(Gregory Jones)氏は語る。
■フランスではすでに変化が
サモラ氏とジョーンズ氏はフランス国立農学研究所(INRA)の運営する国際農業森林気候変動計画委員会(ACCAF)のメンバーだ。同委員会では、気候変動に耐えるブドウから関連立法まで、あらゆることに対する支援のための戦略立案を行っている。
「(フランス北東部の)アルザス地方では、気候変動がすでに問題となっている。香りの特徴や、糖分や酸度のバランスが変わってきているからだ。消費者がこの変化を受け入れるならば、問題にはならない。でも消費者が受け入れないとすれば、問題になる」と、ACCAFの共同コーディネーターのジャンマルク・トゥザール(Jean-Marc Touzard)氏は語る。
一方、これまでアルコール度数を高めるためにしばしば糖を添加してきた仏ボージョレ(Beaujolais)の生産者らは、気候の温暖化により自分たちのブドウの品質向上を目の当たりにしている。「(フランスが激しい熱波に襲われた)2003年には、私たちのワインはまるでコート・デュ・ローヌ(Cote du Rhone)のワインのような味がした」と、ボージョレ生産者グループのメンバーは語った。
しかしトゥザール氏は「10年間は彼ら(ボージョレの生産者ら)は幸福だろう。その後は問題を抱えることになる」と予測する。
■変化への適応策、農地高度や品種変更、品種改良
地中海周辺の仏ラングドック(Languedoc)地方ではすでにこういった問題が起きている。より暑く、乾燥した気候に変わり、元から力強いこの地方のワインがいっそうフルボディでアルコール度数の高いものとなり、フィネス(ワインの優雅さ、繊細さ)が犠牲になっているという声もある。
「ラングドックでは、生産者がすでに適応を始めている。より標高の高いところでブドウを育てたり、違う土壌に植えたりしている」と、トゥザール氏。
別の解決策は、欧州の厳格な原産地法のもとで認められているブドウの品種リストを改定し、シチリア島やギリシャ、スペイン、ポルトガルといった気候の暑い地域の原産種を導入することだ。
また、研究者らは、これらのブドウの遺伝子を解読すれば、品種改良を行うこともできると指摘する。ジョーンズ氏によれば、ポルトガルだけでも原産種は100~150種あるが、これらの品種についてはほとんど研究がされていないと言う。「(ブドウが)に遺伝物質があるより南の、とても暖かい地域(の原産種)は、将来の暑さ対策の宝庫となりえる」と語った。(c)AFP/Suzanne Mustacich
これは北欧流のファンタジーだろうか。いや違う、と気候専門家らは語る。地球の温暖化によって、すでにさまざまな変化がワインの世界に起きているのだ。
■変わるワインのスタイル
ブドウ栽培の新たな農地が開拓される一方で、一部の伝統的産地の将来は、気温上昇と長引く干ばつに脅かされている。
そしてその二つの極端な気候の間で、長い期間をかけて構築されてきたワインのスタイルが、変化を強いられている。かつて軽くてすっきりしていると定評のあった白ワインの一部は、よりふくよかで香り高くなり、ミディアムボディの赤ワインは重量級のフルボディに変わりつつある。
「警鐘を鳴らす人騒がせな人もいるが、私は楽天的でありたいね」と語るのは、ワイン学の研究者でスペイン・タラゴナ(Tarragona)にあるロビラ・イ・ビルジリ大学(Rovira i Virgili University)教授のフェルナンド・サモラ(Fernando Zamora)氏だ。「伝統の地域にもワイン畑は残る。このことには疑いを持っていない。しかし、新たな戦略も考えなければならない。そして新たなブドウ園地帯もできるだろう。それは間違いない」
「すでにドイツでは良質な赤ワインが作られている。かつては極めて困難だった場所だ。それにデンマークでもワインを作り始めた」
■比較的涼しい地域に注目
ワイン業界に協力している世界各地の気候学者らは、2050年までに気温が1~2度上昇すると予測している。また同時に異常気象の回数も増えるとみられている。
北欧での新たなブドウ園プロジェクトは、天候の予測不能性が高まっていることや、たった1回の寒波でもブドウがすべて台無しになってしまうことを考えると、リスクが高いだろう。故に、最も大きな変化が訪れるのは、近年まで特定のブドウ品種を作るのに苦労していた地域で生産されるワインの種類かもしれない。
恩恵を受けるとみられるのはタスマニアやニュージーランドの一部、チリ南部、オンタリオ(Ontario)などのカナダの一部地域、英イングランド、ドイツのモーゼル(Mosel)やライン(Rhine)地方などだ。
「30~50年前には寒すぎてブドウの収穫ができなかったのが、現在では比較的寒冷程度の気候になり、当時よりも(ワイン生産に)適するようになった地域なら、世界中どこでも良いだろう」と、南オレゴン大学(Southern Oregon University)のワイン学教授、グレゴリー・ジョーンズ(Gregory Jones)氏は語る。
■フランスではすでに変化が
サモラ氏とジョーンズ氏はフランス国立農学研究所(INRA)の運営する国際農業森林気候変動計画委員会(ACCAF)のメンバーだ。同委員会では、気候変動に耐えるブドウから関連立法まで、あらゆることに対する支援のための戦略立案を行っている。
「(フランス北東部の)アルザス地方では、気候変動がすでに問題となっている。香りの特徴や、糖分や酸度のバランスが変わってきているからだ。消費者がこの変化を受け入れるならば、問題にはならない。でも消費者が受け入れないとすれば、問題になる」と、ACCAFの共同コーディネーターのジャンマルク・トゥザール(Jean-Marc Touzard)氏は語る。
一方、これまでアルコール度数を高めるためにしばしば糖を添加してきた仏ボージョレ(Beaujolais)の生産者らは、気候の温暖化により自分たちのブドウの品質向上を目の当たりにしている。「(フランスが激しい熱波に襲われた)2003年には、私たちのワインはまるでコート・デュ・ローヌ(Cote du Rhone)のワインのような味がした」と、ボージョレ生産者グループのメンバーは語った。
しかしトゥザール氏は「10年間は彼ら(ボージョレの生産者ら)は幸福だろう。その後は問題を抱えることになる」と予測する。
■変化への適応策、農地高度や品種変更、品種改良
地中海周辺の仏ラングドック(Languedoc)地方ではすでにこういった問題が起きている。より暑く、乾燥した気候に変わり、元から力強いこの地方のワインがいっそうフルボディでアルコール度数の高いものとなり、フィネス(ワインの優雅さ、繊細さ)が犠牲になっているという声もある。
「ラングドックでは、生産者がすでに適応を始めている。より標高の高いところでブドウを育てたり、違う土壌に植えたりしている」と、トゥザール氏。
別の解決策は、欧州の厳格な原産地法のもとで認められているブドウの品種リストを改定し、シチリア島やギリシャ、スペイン、ポルトガルといった気候の暑い地域の原産種を導入することだ。
また、研究者らは、これらのブドウの遺伝子を解読すれば、品種改良を行うこともできると指摘する。ジョーンズ氏によれば、ポルトガルだけでも原産種は100~150種あるが、これらの品種についてはほとんど研究がされていないと言う。「(ブドウが)に遺伝物質があるより南の、とても暖かい地域(の原産種)は、将来の暑さ対策の宝庫となりえる」と語った。(c)AFP/Suzanne Mustacich