【2月15日 AFP】排水に混入した抗不安薬によって、自然環境にすむ魚の性質が大胆になり反社会性が高まることが分かったと、スウェーデンの研究チームが14日に発表した。深刻な生態学的結果を招きかねないと警鐘を鳴らしている。

 スウェーデンのウメオ大学(Umea University)の研究チームは、抗不安薬のオキサゼパム(Oxazepam)製剤にさらされた淡水魚の一種パーチが、群れを離れて1匹だけで生きる傾向が高くなることを発見した。オキサゼパムは他のさまざまな薬剤と同様、人間の排泄物に含まれて自然環境に排出される。

 15日の米科学誌サイエンス(Science)に掲載される論文で、主著者である生態学者のトーマス・ブローディン(Tomas Brodin)氏は「通常、パーチは用心深く、群れで餌を追う。これは、よく知られている存続と繁栄をかけた戦略だ。しかし、オキサゼパム(が混入した水)の中を泳いでいるパーチは著しく大胆さを増す」と説明。群れを離れることによって、捕食者に食べられてしまう危険性が増すと指摘している。

 研究チームは、スウェーデン国内の人口密集地域の排水と同程度の薬物濃度の水でパーチを飼育する実験を行った。魚たちは大胆さを増しただけでなく、食事のペースも早くなり、この点も生態系のバランスを崩しかねないと懸念されている。

 この研究結果は、米ボストン(Boston)で開催中の米国科学振興協会(American Association for the Advancement of ScienceAAAS)年次総会でも報告される。(c)AFP