【1月29日 AFP】たばこの吸い殻からプラスチックを生み出すという画期的なリサイクルの取り組みが、米国のベンチャー企業によって世界各国で広がっている。

 トム・ザキー(Tom Szaky)氏(30)は米プリンストン大学(Princeton University)を中退し、ニュージャージー(New Jersey)州トレントン(Trenton)で「テラサイクル(TerraCycle)」という会社を設立した。同氏は、この世の中には「ごみ」というものは存在せず、世界中の歩道を散らかす吸い殻でさえ再利用が可能だと語る。

 カナダで5月にスタートし、現在では米国やスペインにも広まっているこのプログラムで、同社はボランティアが集めたたばこの吸い殻を、どんな製品にでも使えるプラスチック素材に変えている。灰皿も作ることが可能だという。

 吸い殻はまず分解され、フィルター以外の紙とたばこ部分は肥料に使われる。フィルターはアセチルセルロースと呼ばれるプラスチックでできており、これを溶かして原料として使えば、重い商品を運ぶのに使われるパレットなど、幅広いプラスチック製品を作ることができるという。

■「リサイクル不可能なものを可能に」

 現在、テラサイクルの最高経営責任者(CEO)を務めるザキー氏は、ニュージャージー州の本社で行われたAFPのインタビューで、同社の設立目的について「リサイクル不可能なものを、リサイクル可能にすること」と語った。間もなくチューインガムや使用済みおむつのリサイクル事業も始まるというが、同氏の「個人的なお気に入り」は吸い殻のリサイクルだという。

「カナダで5月に始めた事業は大成功で、短期間で100万本以上の吸い殻を集めることができた。たくさんの素晴らしい団体が吸い殻集めに協力してくれた上に、たばこ業界もこれをすごく気に入り、米国とスペインでもプログラムを立ち上げた」(ザキー氏)

 ザキー氏は、今後4か月以内に欧州各国に加えメキシコにも事業が拡大する可能性もあると語っている。テラサイクルの収集プログラムには現在、世界22か国の3500万人が参加している。

■20万本の吸い殻が庭用の椅子に

 プラスチックの灰皿1枚作るのに必要な吸い殻は1000~2000本、庭用の椅子では20万本以上というが、原料は有り余るほどある。ザキー氏によると、世界では毎年2兆本もの吸い殻が捨てられており、これは道端に捨てられる全てのごみの37%に当たる。

 ミミズの糞(ふん)を集め肥料にするという2人の人間のアイデアから始まったテラサイクルだが、その社員の数は現在では約100人に膨れ上がった。

「この世に存在する全てのごみを片付けたい。僕の本当の意味でのゴールは、ごみが全てなくなること。自然界ではごみなんて無いのだから」

(c)AFP/Brigitte Dusseau