【1月17日 AFP】中国は今週の「窒息」するようなスモッグから逃れたいのであれば、深刻な汚染源である石炭や自動車の使用にあおられている経済の抜本的な見直しが必要だと専門家らが警告している。

中国北部の広い範囲で数日間に及んだ大気汚染への緊急対応で、学校は休校、工場は閉鎖、公共交通は停止した。

 専門家たちは中国の急激な工業化と、好景気で生まれた中流階級の消費習慣がもたらした結果に対し、もっと強硬な対策をとるよう当局に強く求めている。

 中国共産党の総書記に就任した習近平(Xi Jinping)氏は「もっと快適な住環境、もっと美しい環境」をという要求に応えるため、新政権は努力すると宣言した。

 中国政府は昨年から汚染に関するデータの公表を開始したが、観測筋によると、これによってインターネット上の掲示板に押し寄せる新たに目覚めた世論と、通常は党の機関紙といえる国営メディアの双方からスモッグに対する大きな反発が起こった。

 今週北京を覆った危険な濃霧によって売り上げが伸びたのはマスクと屋根取付型の空気清浄機で、国営新華社(Xinhua)通信は、美しい中国を築くという党の誓約は早くも「脅かされている」と報じた。

■汚染の根源、自動車の増加と石炭使用

 2008年の北京五輪に世界の目が注がれていた時には、北京市は2か月以上にわたって厳格な規制を敷き、有害物質の排出は60%減った。自家用車は1日おきの運転に限られ、工事現場はストップ、工場は閉鎖された。

 しかし、そうした措置は「長く続かない極端な解決法だ」と上海(Shanghai)にある中欧国際工商学院(China Europe International Business School)健康管理政策センター所長のジョン・カイ(John Cai)教授は批判する。「必要とされているのは、政府が長期的な対策として暖房を集中管理し、地方部の個々の世帯が石炭を燃やさないようにし、同時に都市部の自動車の使用を削減することだ」と同教授は提言する。抜本的な改革をすれば中国は「短期的には経済損失をこうむる」だろうが、政府は長期的視点を持つべきだと同氏は強調する。

 自動車使用の増加は中国経済の重要な牽引(けんいん)力であってきたと同時に、増えゆく中国の富の分かりやすい象徴でもある。しかし北京にはすでに500万台の車があふれ、さらに毎月2万台ずつ増えている中で、そこに手を付けることは不可欠だとカイ氏は主張する。例えば提案しているのは、排出を減らすため所有者に高い登録料を課すことだ。

石炭の使用に関する対策はさらに困難が多い。各家庭には集中暖房の使用が奨励されているが、世界石炭協会(World Coal Association)によると中国の電力の79%は石炭発電だという。しかも使われている石炭は、欧米市場で好まれる「クリーンコール」ではなく低品質のものが大半だという。

■改善には「法、投資、歳月」と強い政治的意思

 国際環境保護団体グリーンピース(Greenpeace)気候とエネルギー源担当主任の周嵘(Zhou Rong)氏は長期的には、大気質を改善するために石炭の使用を削減する地域規模の政策が必要だと述べる。

 英ロンドン市長室の上級職員だった上海交通大学(Shanghai Jiaotong University)客員教授ジョン・ロス(John Ross)氏は、英国の首都で1952年に起きた「ロンドンスモッグ事件(Great Smog of 1952)」と比較する。ロンドンのスモッグがようやく消えたのは、発電所を市外へ強制移転させる法律が施行し、煙を排出する燃料の多くを禁止した後だった。

 ロス氏は中国版ツイッター「新浪微博(Sina Weibo)」で「ロンドンから得られる教訓は、工業汚染は取り除くことができるということだが、それには厳しい法律と多額の投資、10年に及ぶ歳月が必要だ」と書いている。

 北京市は昨年5月、2015年までに汚染度の高い1200の事業をなくすと宣言した。渋滞を緩和するためにレンタル自転車の貸し出しスタンドも設置した。

 しかし長期にわたる厳格な管理を施行するためには、新指導者たちの強固な政治的意思が不可欠だとカイ氏は述べる。同氏は2年以内の「実質的、急進的な改革」を期待さえする。

 多くの一般市民から見ても楽観視を許さない状況だ。微博のある投稿者は「大気汚染は地震や洪水、化学物質の流出と同じくらい深刻な緊急事態だ」と述べている。「この問題を解決するためには、政府は環境保護局だけではなく、社会全体を総動員しなければならない」(c)AFP/Neil Connor