シカゴ高層ビル群に省エネ技術導入、全米の先駆けとなるか
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【12月11日 AFP】米イリノイ(Illinois)州シカゴ(Chicago)の高層ビル群で、オフィス照明に人の動きを検知する機能を追加するなど、省エネ機器の設置による「グリーン化事業」が進んでいる。プロジェクト関係者は、米国全土に変化を促すことになればと期待を寄せている。
シェラトンホテル(Sheraton Hotel)の技術主任、ライアン・イーガン(Ryan Egan)氏は、最新の温度調節装置の導入で年間13万6000ドル(約1100万円)の経費削減を実現したと語る。
この装置は予約管理システムと連動しており、ゲストがチェックインする瞬間まで客室の温度は変わるがままにされている。さらにゲストが客室を出ると、設定範囲内の最高・最低温度になるまで空調は止められる。この温度は、ゲストが戻ってきてから12分以内に快適な温度に戻すことが可能なレベルに管理されているという。
「温度の変化をどこまで許容するかを判断する回路はとても興味深い」とイーガン氏。「(夏期に)日陰の客室であれば、短い時間で室温を戻せることが分かっているので、より高い温度まで上昇を許す余地がある」
■シカゴ市の省エネ計画
今後5年間でエネルギー消費量の20%削減を目指す「レトロフィット・シカゴ(Retrofit Chicago)」プロジェクトには、シェラトン・ホテルなど商業ビル14棟が参加した。プロジェクト全体でのコスト削減額は年間500万ドル(約4億1000万円)と試算している。成功すれば、自動車8000台の走行を止めた場合と同じ効果を生み出すことになる。
シカゴ市当局の持続可能性のための政策担当主任、カレン・ウェイガート(Karen Weigert)氏は「初の高層ビルを建造したのがシカゴ市であるという歴史から、私たちは高層ビルをグリーン化するという取り組みに愛着がある」と述べる。
シカゴ市の温室効果ガス排出量の70%は、住宅や事業所、学校、政府庁舎などの冷暖房と電力使用に由来する。
プロジェクトでは、商業ビルのグリーン化に加え、数百ある市の関連施設でのエネルギー使用量を20%削減することも目標に掲げている。これは年間2000万ドル(約16億5000万円)のコスト削減になり、自動車3万台の走行を止めた場合に匹敵する排出ガス削減効果だという。
市当局はこのプログラムにさらに多くの大手商業ビルが参加すると期待している。さらに、住宅への省エネ導入を支援するプログラムも立ち上げた。
米連邦政府のエネルギー省も同様のプログラムを推進しており、学校や自治体、事業所などの協力により、20億平方フィートで20%のエネルギー消費削減を目指している。
■AT&Tの取り組み
シカゴの取り組みに最初に参加した企業は、米通信大手AT&Tだった。自社が入るシカゴ中心街のオフィスタワーでさまざまな省エネ技術を実験し、2020年までに20%削減を実現するために同社全体で採用すべき技術を模索している。これまでの成果は良好だ。
まず、天井の照明をエネルギー効率の良い電球に変え、動体検出装置を設置して営業スタッフや技術スタッフがデスクにいないときには照明を落とすようにした。空調システムには断熱シャッターを採用し、冬の冷気や夏の熱気を遮断するようにした。また大型ファンには調節機能を付け、必要なときだけ作動するようにした。ファンのモーターベルトまで交換し、効率を改善した。
これらの試験技術はすべて3年以内に費用を回収できる見込み。また技術の大半は、AT&Tの事業所1000か所と販売店500店舗に今後導入が予定されている。
AT&Tのタワーのようなビル管理を43年間行ってきたジム・ジャビレット氏は、企業の態度が大きく変わったことに驚いている。「60年代と70年代にはみんな1年中、冷暖房を使っていたよ」
■米国人にも省エネ浸透の時代
こういった技術革新は、スペインや日本など、電力価格が割高で政府が省エネ政策に熱心な国々では一般的なものだった。
だが、シェラトン・シカゴなど米ホテル大手10社の建物を所有する不動産会社経営者のダン・ティッシュマン(Dan Tishman)氏は、米国人もこうした変化を受け入れる準備ができたと語る。「この国の消費者も、照明の動体検出装置や、洗浄水量の少ないトイレ、緑のある屋上といった省エネ技術に慣れ、そして評価している」
米環境保護団体「天然資源保護協議会(Natural Resources Defense Council、NRDC)」の会長でもあるティッシュマン氏は「計画中の改善策の導入はうまく行き、他の大手ホテル不動産所有者もこの流れを追うと考えている」と語った。(c)AFP/Mira Oberman
シェラトンホテル(Sheraton Hotel)の技術主任、ライアン・イーガン(Ryan Egan)氏は、最新の温度調節装置の導入で年間13万6000ドル(約1100万円)の経費削減を実現したと語る。
この装置は予約管理システムと連動しており、ゲストがチェックインする瞬間まで客室の温度は変わるがままにされている。さらにゲストが客室を出ると、設定範囲内の最高・最低温度になるまで空調は止められる。この温度は、ゲストが戻ってきてから12分以内に快適な温度に戻すことが可能なレベルに管理されているという。
「温度の変化をどこまで許容するかを判断する回路はとても興味深い」とイーガン氏。「(夏期に)日陰の客室であれば、短い時間で室温を戻せることが分かっているので、より高い温度まで上昇を許す余地がある」
■シカゴ市の省エネ計画
今後5年間でエネルギー消費量の20%削減を目指す「レトロフィット・シカゴ(Retrofit Chicago)」プロジェクトには、シェラトン・ホテルなど商業ビル14棟が参加した。プロジェクト全体でのコスト削減額は年間500万ドル(約4億1000万円)と試算している。成功すれば、自動車8000台の走行を止めた場合と同じ効果を生み出すことになる。
シカゴ市当局の持続可能性のための政策担当主任、カレン・ウェイガート(Karen Weigert)氏は「初の高層ビルを建造したのがシカゴ市であるという歴史から、私たちは高層ビルをグリーン化するという取り組みに愛着がある」と述べる。
シカゴ市の温室効果ガス排出量の70%は、住宅や事業所、学校、政府庁舎などの冷暖房と電力使用に由来する。
プロジェクトでは、商業ビルのグリーン化に加え、数百ある市の関連施設でのエネルギー使用量を20%削減することも目標に掲げている。これは年間2000万ドル(約16億5000万円)のコスト削減になり、自動車3万台の走行を止めた場合に匹敵する排出ガス削減効果だという。
市当局はこのプログラムにさらに多くの大手商業ビルが参加すると期待している。さらに、住宅への省エネ導入を支援するプログラムも立ち上げた。
米連邦政府のエネルギー省も同様のプログラムを推進しており、学校や自治体、事業所などの協力により、20億平方フィートで20%のエネルギー消費削減を目指している。
■AT&Tの取り組み
シカゴの取り組みに最初に参加した企業は、米通信大手AT&Tだった。自社が入るシカゴ中心街のオフィスタワーでさまざまな省エネ技術を実験し、2020年までに20%削減を実現するために同社全体で採用すべき技術を模索している。これまでの成果は良好だ。
まず、天井の照明をエネルギー効率の良い電球に変え、動体検出装置を設置して営業スタッフや技術スタッフがデスクにいないときには照明を落とすようにした。空調システムには断熱シャッターを採用し、冬の冷気や夏の熱気を遮断するようにした。また大型ファンには調節機能を付け、必要なときだけ作動するようにした。ファンのモーターベルトまで交換し、効率を改善した。
これらの試験技術はすべて3年以内に費用を回収できる見込み。また技術の大半は、AT&Tの事業所1000か所と販売店500店舗に今後導入が予定されている。
AT&Tのタワーのようなビル管理を43年間行ってきたジム・ジャビレット氏は、企業の態度が大きく変わったことに驚いている。「60年代と70年代にはみんな1年中、冷暖房を使っていたよ」
■米国人にも省エネ浸透の時代
こういった技術革新は、スペインや日本など、電力価格が割高で政府が省エネ政策に熱心な国々では一般的なものだった。
だが、シェラトン・シカゴなど米ホテル大手10社の建物を所有する不動産会社経営者のダン・ティッシュマン(Dan Tishman)氏は、米国人もこうした変化を受け入れる準備ができたと語る。「この国の消費者も、照明の動体検出装置や、洗浄水量の少ないトイレ、緑のある屋上といった省エネ技術に慣れ、そして評価している」
米環境保護団体「天然資源保護協議会(Natural Resources Defense Council、NRDC)」の会長でもあるティッシュマン氏は「計画中の改善策の導入はうまく行き、他の大手ホテル不動産所有者もこの流れを追うと考えている」と語った。(c)AFP/Mira Oberman