成果と失望、京都議定書から新枠組みの姿を探る COP18
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【11月30日 AFP】京都議定書(Kyoto Protocol)の第1約束期間が今年で期限切れを迎えようとする中、世界は地球温暖化との戦いにおける成功モデルと回避すべき落とし穴について、これまでの経緯の分析に取り組んでいる。
すべてが順調に進めば、京都議定書は、現在カタールのドーハ(Doha)で行われている国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第18回締約国会議(COP18)で協議中の新たな国際的枠組みに取って代わられる。
新たな枠組みの使命は、地球の気温上昇を産業革命以前との比較で2度以内に抑えることになるだろう。しかし、このポスト京都議定書はどのようなものになるべきなのか。その答えを探そうと多くの人たちが、現在までの気候変動関係の条約としては最も野心的で論争を呼んだ京都議定書に詳しい検討を加えている。
議長として京都議定書をまとめたアルゼンチンの外交官ラウル・エストラダ(Raul Estrada)氏は「(京都)議定書は1997年当時にわれわれが生み出すことができた最善の結果。しかし今や状況は激変した」と語る。
約2年半にわたる困難な交渉の末、97年に採択された京都議定書はその後も運用ルールをめぐる論議が続き、05年にようやく発効した。同議定書は先進国37か国と欧州連合(EU)に対し、2008~2012年の間に温室効果ガスを1990年比で全体として5%削減することを定めた。現在ドーハでは2013年から始まるこの議定書の第2約束期間について協議されている。
■新興国や米中を含まない「ざる」制度との批判
京都議定書は常に熱い論争を呼んできた。
開発途上国や環境保護団体などは、これまでの経緯から今日の温暖化に責任を負うべき先進国に法的拘束力をもって排出量削減を努力させるものとして、京都議定書を支持している。
しかし議定書に批判的な人々は欠陥を指摘する。97年当時には妥当だったであろう富裕国と貧困国の境界が、今日ではひどく時代錯誤になっている点が特に厳しく批判されている。
京都議定書では開発途上国の削減目標値を設定していないが、これは貧困から脱するために開発途上国が安価な化石燃料を使用するのはやむを得ないという考えからだ。そうした国々にはニジェールやブルキナファソといった最貧国だけでなく、韓国、サウジアラビア、クウェート、シンガポール、マレーシアといった新興経済国も含まれている。
そのため、97年以降に世界最大の二酸化炭素(CO2)排出国に躍り出た中国には削減目標値が設定されていない。さらに現在、世界第2の排出国である米国も、京都議定書に調印はしたものの「不公平」だとして批准はしていない。
英科学誌ネイチャー(Nature)は28日、目標値を設定された国の多くは容易にそれを達成したが、「京都議定書は開発途上国の排出限界値を定めていないため、全世界での温室効果ガス排出量は、主に中国での石炭消費の激増によって、過去最速で増加している」と発表し、京都議定書は「実質的にほとんど効果がない」と批判した。
国際エネルギー機関(International Energy Agency、IEA)によれば、全世界のエネルギー関連のCO2排出量は11年、前年比3.2%増で過去最大の31.2ギガトンに達したと推定されている。
■将来に足跡残す京都議定書の意義
そうした批判があっても、京都議定書は気候変動抑制の一端を担う可能性のある革新的手法を生み出した。例えば、排出枠の取引を認める炭素市場や、貧困国の温室効果ガス削減プロジェクトを支援した先進国に、それによって削減できた排出量の一部をクレジットとして与え、自国の削減に充当することを認めるクリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism)などだ。
「気候に関する国際行動キャンペーン(Global Campaign for Climate Action、GCCA)」のケリー・リグ(Kelly Rigg)エグゼクティブ・ディレクターは「京都議定書の成否は、どのような基準で評価するかによって変わる」と言う。「気候変動を止められる水準まで排出量を削減できたかといえば、ノーだ。しかし、将来の低炭素経済への移行につながる投資や立法措置を先駆的な国々に促したかといえば、イエスだ」
「われわれは今、京都議定書を必要としている。自主的な行動だけでは成果を挙げることができないので、拘束力あるルールによって新たな国際的枠組みへの機運につなげる必要がある。しかし違反者に制裁を科すのは、口で言うほど簡単ではない」
京都議定書には不遵守に関する条項があり、2012年までの排出削減目標を達成できなかった国には次期約束期間に30%の排出削減量が上乗せされる。しかし京都議定書から脱退する国を止める方法はなく、現に数年にわたって排出量上限を超過したカナダは2011年に脱退した。
「問題は国際法の機能の仕方だ」とエストラダ氏は嘆く。「国連安全保障理事会(UN Security Council)に駆け込んで、遵守しない国へ遠征して欲しいと頼むことはできないのだ」
そうした観点から、排出ガスに価格を設定し各国の排出量削減を促す業界規模の奨励策や課税など、もっと単純な方法があるという主張する人も多い。(c)AFP/Mariette le Roux
すべてが順調に進めば、京都議定書は、現在カタールのドーハ(Doha)で行われている国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第18回締約国会議(COP18)で協議中の新たな国際的枠組みに取って代わられる。
新たな枠組みの使命は、地球の気温上昇を産業革命以前との比較で2度以内に抑えることになるだろう。しかし、このポスト京都議定書はどのようなものになるべきなのか。その答えを探そうと多くの人たちが、現在までの気候変動関係の条約としては最も野心的で論争を呼んだ京都議定書に詳しい検討を加えている。
議長として京都議定書をまとめたアルゼンチンの外交官ラウル・エストラダ(Raul Estrada)氏は「(京都)議定書は1997年当時にわれわれが生み出すことができた最善の結果。しかし今や状況は激変した」と語る。
約2年半にわたる困難な交渉の末、97年に採択された京都議定書はその後も運用ルールをめぐる論議が続き、05年にようやく発効した。同議定書は先進国37か国と欧州連合(EU)に対し、2008~2012年の間に温室効果ガスを1990年比で全体として5%削減することを定めた。現在ドーハでは2013年から始まるこの議定書の第2約束期間について協議されている。
■新興国や米中を含まない「ざる」制度との批判
京都議定書は常に熱い論争を呼んできた。
開発途上国や環境保護団体などは、これまでの経緯から今日の温暖化に責任を負うべき先進国に法的拘束力をもって排出量削減を努力させるものとして、京都議定書を支持している。
しかし議定書に批判的な人々は欠陥を指摘する。97年当時には妥当だったであろう富裕国と貧困国の境界が、今日ではひどく時代錯誤になっている点が特に厳しく批判されている。
京都議定書では開発途上国の削減目標値を設定していないが、これは貧困から脱するために開発途上国が安価な化石燃料を使用するのはやむを得ないという考えからだ。そうした国々にはニジェールやブルキナファソといった最貧国だけでなく、韓国、サウジアラビア、クウェート、シンガポール、マレーシアといった新興経済国も含まれている。
そのため、97年以降に世界最大の二酸化炭素(CO2)排出国に躍り出た中国には削減目標値が設定されていない。さらに現在、世界第2の排出国である米国も、京都議定書に調印はしたものの「不公平」だとして批准はしていない。
英科学誌ネイチャー(Nature)は28日、目標値を設定された国の多くは容易にそれを達成したが、「京都議定書は開発途上国の排出限界値を定めていないため、全世界での温室効果ガス排出量は、主に中国での石炭消費の激増によって、過去最速で増加している」と発表し、京都議定書は「実質的にほとんど効果がない」と批判した。
国際エネルギー機関(International Energy Agency、IEA)によれば、全世界のエネルギー関連のCO2排出量は11年、前年比3.2%増で過去最大の31.2ギガトンに達したと推定されている。
■将来に足跡残す京都議定書の意義
そうした批判があっても、京都議定書は気候変動抑制の一端を担う可能性のある革新的手法を生み出した。例えば、排出枠の取引を認める炭素市場や、貧困国の温室効果ガス削減プロジェクトを支援した先進国に、それによって削減できた排出量の一部をクレジットとして与え、自国の削減に充当することを認めるクリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism)などだ。
「気候に関する国際行動キャンペーン(Global Campaign for Climate Action、GCCA)」のケリー・リグ(Kelly Rigg)エグゼクティブ・ディレクターは「京都議定書の成否は、どのような基準で評価するかによって変わる」と言う。「気候変動を止められる水準まで排出量を削減できたかといえば、ノーだ。しかし、将来の低炭素経済への移行につながる投資や立法措置を先駆的な国々に促したかといえば、イエスだ」
「われわれは今、京都議定書を必要としている。自主的な行動だけでは成果を挙げることができないので、拘束力あるルールによって新たな国際的枠組みへの機運につなげる必要がある。しかし違反者に制裁を科すのは、口で言うほど簡単ではない」
京都議定書には不遵守に関する条項があり、2012年までの排出削減目標を達成できなかった国には次期約束期間に30%の排出削減量が上乗せされる。しかし京都議定書から脱退する国を止める方法はなく、現に数年にわたって排出量上限を超過したカナダは2011年に脱退した。
「問題は国際法の機能の仕方だ」とエストラダ氏は嘆く。「国連安全保障理事会(UN Security Council)に駆け込んで、遵守しない国へ遠征して欲しいと頼むことはできないのだ」
そうした観点から、排出ガスに価格を設定し各国の排出量削減を促す業界規模の奨励策や課税など、もっと単純な方法があるという主張する人も多い。(c)AFP/Mariette le Roux