仏名産の高級トリュフ、不作の原因は気候変動 スイス研究
このニュースをシェア
【11月29日 AFP】世界の美食家から珍重されているフランス・ペリゴール(Perigord)地方の黒トリュフが、気候変動の影響で不作に陥っていることが確認できたと、スイスの研究チームが27日、英科学誌「ネイチャー・クライメートチェンジ(Nature Climate Change)」に発表した。
黒トリュフ(学名:Tuber melanosporum)は、その色と高価な値段から「黒いダイヤモンド」と呼ばれ、仏南西部やスペイン、イタリアを原産とする。中でもフランスの黒トリュフは100年前には年間収穫量は1000トンに達したといわれるが、1960年代には年間200~300トンに落ち込み、近年では25トンしか採れなくなってしまった。キロ当たりの価格は2000ユーロ(約21万円)にまで高騰している。
スイス連邦森林・雪・景観研究所(WSL)は27日、黒トリュフの不作は気候変動による夏季の雨不足によって黒トリュフの共生に必要な樫やハシバミが影響を受けたことが原因だとする明確なデータが得られたと発表した。仏ペリゴール地方とスペインのアラゴン(Aragon)地方で、1970~2006年に黒トリュフ収穫量がほぼ同じペースで減少しており、これが夏季の降雨量減少と一致していることをつきとめたという。
一方、夏季に十分な降雨があるイタリアのピエモンテ(Piedmont)州やウンブリア(Umbria)州では、トリュフ収穫量はやはり減少しているものの、フランスやスペインほど深刻ではなかった。
黒トリュフの収獲期は11月~2月だが、収穫量には夏の気候が大きく影響する。トリュフは低温で湿気の多い環境を好み、暑く乾燥した環境では育ちにくい。こうした特性から、研究チームはトリュフの十分な生育には夏季に土壌が高い湿度を保っていることが重要だとする仮設を立てた。
多くの気候モデルが示すとおり南欧の気温が今世紀中に2度上昇するなら、将来はドイツやスイスが黒トリュフの産地となるかもしれないと研究チームは報告している。コンピュータシミュレーションによれば、アルプス北部の森林地域ではやや気温が上昇するものの乾燥はしないため、天然であれ栽培物であれ黒トリュフの生育に最適な気候となるのだという。
この仮説を裏付けるかのように、スイスとドイツでは近年「夏トリュフ(Tuber aestivum)」と呼ばれるトリュフの収穫量が急増している。(c)AFP