【7月26日 RenewableEnergyWorld.com】米軍によるバイオ燃料の使用などを禁止する法案に反対する声が、米国の複数の関係者から上がっている。

 下院が5月18日に賛成299反対120で可決し、米上院軍事委員会(Senate Armed Services Committee)でも5月24日に賛成13反対12で可決された「2013会計年度国防権限法案(National Defense Authorization Act for Fiscal Year 2013H.R. 4310)は、化石燃料よりも費用がかかる場合に軍によるバイオ燃料の購入やバイオ燃料開発への投資を禁じるとともに、石炭や天然ガス由来で一般の化石燃料より炭素排出量が多い液体代替燃料の規制を適用除外とする内容を含んでいる。

 航空業界の13の団体から成る連合体は上院軍事委の決定を受け、同法案はバイオ燃料産業の発展に深刻なダメージを与え、米国のエネルギー自立を妨げると抗議する書簡を同委員会に送った。業界団体側はバイオエネルギーへの投資を拡大することにより、燃料効率の改善のみならず2050年までに05年比で炭素排出量を50%削減するという大きな目標の達成に向けて前進することになるとも主張している。

■農務長官もいら立ち

 トム・ビルサック(Tom Vilsack)米農務長官も電話会見で上院軍事委の採決結果に驚きといら立ちを表明した。

「私には全く理解できない。バイオ燃料業界を支えれば農家所得の増加、米国の農業地帯での雇用創出、消費者にとってのコスト削減、さらには民間航空会社の要望を満たすことにつながり、(…)わが国の軍隊が外国からのエネルギー供給に頼る割合を減らすことができるというのに。こんなことも理解できない人がいるとは驚きだ」

 ビルサック農務長官は、バイオ燃料産業の未来は軍事、特に海軍と強く結びついていると指摘するとともに、今投資を行うことによって将来のコストを低減することができると述べ、実際にコストは既に下がってきていると付け加えた。

 米海軍のバイオ燃料購入価格は2010年10月時点の1ガロン(約3.8リットル)当たり424ドル(約3万3000円)から2011年12月では同26ドル67セント(約2000円)まで低下し、6月にハワイ(Hawaii)沖で行われた環太平洋合同演習(Rim of the Pacific ExerciseRIMPAC)で使用したバイオ燃料と石油燃料を半々に混合した燃料は1ガロン当たり15ドル(約1200円)だったという。

 バイオ燃料産業はまだ研究開発段階にあるが、継続した支援無しに生産コストを下げることは不可能だ。「政府には、この産業を順調に成長させるために民間セクターと協力してインセンティブや適切な税制などの支援を行う役割がある」とビルサック農務長官は述べた。(c)RenewableEnergyWorld.com/Meg Cichon/AFPBB News