【6月18日 RenewableEnergyWorld.com】保守的な大産油国サウジアラビアが、世界最大級の再生可能エネルギー計画を発表した。

 油田から豪華さにいたるまで何でもスケールが大きいサウジアラビアだけに、再生可能エネルギー計画も超特大だ。現在同国に再生可能エネルギー発電設備はないが、今後20年間で5400万キロワットの設備を導入するという。

 比較のために例を挙げると、サウジアラビアの人口(約2700万人)の10倍の人が暮らす米国で稼動している太陽光・風力発電の設備容量は5000万キロワットだ。

■石油枯渇に備える?

 再生可能エネルギー分野への進出自体は意義深いことだが、新たな疑問も浮かび上がる。サウジアラビアは化石燃料の前途に不安を感じ、いずれは枯渇するとついに認めたのだろうか?

 再生可能エネルギーによる発電量が増えれば、火力発電で賄わなければならない電力がその分だけ減り、国際市場で販売できる天然ガスや石油が増える。

 このことがサウジアラビア人にとって重大な意味を持つとすれば、それは彼らが自国の石油やガスの資源に限りがあることに気づいたときだけだ。

 少なくとも公には「世界の石油生産に危機が訪れたら、資源豊富なわが国がいつでもサポートする」と強調してきたサウジアラビアは、石油資源は有り余るほど存在すると最も強く主張する国の1つだった。

 今回の発表は、同国の天然資源に対する姿勢の転換を意味するのか、はたまた現実的なそろばん勘定がようやく勝利を収めようとしているのか。

 原油価格が1バレル100ドルを超えている中(原文公開当時)、化石燃料の使用を減らすことによる回避コスト(事前に手を打ったことで回避できる出費)は既に太陽光発電のコストを上回っている。このことが大規模な計画に正当性を与えている。

 サウジアラビアのコンサルタントたちはこの回避コストは機会費用(ある選択肢を選ばずに別の選択肢を選んでいたら得られていたはずの利益。例えば火力発電の燃料にした石油を輸出に回していたならば得られていたはずの利益)と呼び、再生可能エネルギーに前向きな姿勢を示している。

■国内電力需要の4分の1を太陽光発電で
 
 5月上旬、同国で開かれた会議で同国「アブドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市機構(King Abdullah City for Atomic and Renewable EnergyKACARE)」プロジェクトの調達計画が発表された。同機構の委員会はこの計画を近く正式に承認するとみられている。

 計画は国内の再生可能エネルギー産業を育成し、サウジアラビアの電力需要の4分の1を太陽光発電だけで賄うことを目標にしている。

 再生可能エネルギー関連の報道は太陽光発電(PV)の設備容量に目を奪われがちだが、それを上回る集光型太陽熱発電(CSP)が計画されている。当初計画の目標は

・集光型太陽熱発電: 2500万キロワット
・太陽光発電: 1600万キロワット
・風力発電: 900万キロワット

となっている。

 陽射しに恵まれている一方で風は弱いサウジアラビアにあってさえ、1600万キロワットの太陽光発電と900万キロワットの風力発電の差が1桁にとどまっているのは興味深い。

■固定価格買い取り制度で計画達成へ

 保守的なサウジアラビアらしく同計画はエネルギー源を分散している。KACAREプロジェクトは太陽光発電、集光型太陽熱発電、風力発電、地熱、廃棄物エネルギー発電に関する2回の入札で始まる。

第1回目は2013年に以下の内容で実施される予定だ。
・太陽光発電: 110万キロワット
・集光型太陽熱発電: 90万キロワット
・風力発電: 65万キロワット
・地熱・廃棄物エネルギー発電: 20万キロワット

2014年に行われる第2回目の入札内容は以下の予定。
・太陽光発電: 130万キロワット
・集光型太陽熱発電: 120万キロワット
・風力発電: 105万キロワット
・地熱・廃棄物エネルギー発電: 25万キロワット

 最近、再生可能エネルギーのオークションを選択した他の国とは異なり、サウジアラビア政府はプロジェクト実施に向け、管理が比較的簡単で済む固定価格買い取り制度(フィード・イン・タリフ、FIT)を採用する方針だ。2015年にも導入する。

 計画中の設備容量5400万キロワットの90%近くは、数種類の発電方式を対象にしたFITを通して割り当てられる予定だ。(c)RenewableEnergyWorld.com/Paul Gipe/AFPBB News

再生可能エネルギー専門サイト、RenewableEnergyWorld.comにこの記事の原文(英語)が掲載されています。