【6月15日 AFP】ブラジル北部パラ(Para)州のアマゾン(Amazon)川流域に広がるジャングルの奥深くに、破壊された熱帯雨林を再生する「甘い特効薬」を作るチョコレート工場がある。

 チョコレートの原料となるカカオ豆をはじめとする農産物は長年、アマゾンの森林破壊の要因となってきた。農民たちは土地を酷使しては、新たな農地を求めて未開の森を切り開いていったのだ。

 だが、アマゾン横断道路(Trans-Amazonian Highway)沿いの町Medicilandiaの協同組合では、伐採地に植林して生物多様性を守ることでカカオ栽培を持続可能な産業として復活させる取り組みを進めている。「何十年もの間、アマゾン横断道路は環境破壊の主犯扱いだった。このイメージを払拭(ふっしょく)したい」と、Ademir Venturim組合長は意気込みを語る。

 黄色が目に鮮やかなCacauwayの工場では、周辺にある40の小規模農園で収穫されたカカオ豆を原料にチョコレートを生産している。この工場は一種の実験的試みだ。アマゾンの他の地域でも、その土地原産の農作物で応用可能だという。Venturim氏は今月20日からリオデジャネイロ(Rio de Janeiro)で開催される「国連持続可能な開発会議(リオ+20、Rio+20)」に触れ、胸を張った。

「われわれは(チョコレート工場を通じて)雇用と収入源を生み出し、リオ+20が目標として掲げる経済・社会・環境の発展に貢献している」

■カカオと原産植物を交互に植えて森を再生

 林業や農業、土地開発などによる熱帯雨林の破壊は、化石燃料に次ぐ第2の地球温暖化原因とされ、世界の二酸化炭素(CO2)排出量の2割に貢献していると言われる。地球上の酸素の約20%を作り出していることから「地球の肺」と呼ばれるアマゾン川流域のアマゾニアの破壊は、そのうちの約半分にあたる。

 パラ州はブラジルでも最も森林破壊が深刻な州の1つだ。その南西部に位置するCacauway工場で生産されるチョコレートは当初、地元の販売店でささやかに売られるだけだった。しかし、この取り組みは協同組合の期待を大きく超えるものへと成長した。

 同工場では、国内大手メーカーの提示価格の1.5倍の値段でカカオ豆を買い取っている。カカオ豆の袋には生産者名が明記されている。町の農園では、カカオの木の間にアマゾンにもともと自生するマホガニーなどの樹木の苗木を植え、林冠の日陰を作り出している。

 家族農業を支援する市民団体で働くジョアン・バチスタ(Joao Batista)氏によると、カカオ栽培には日陰が欠かせない。その日陰を、マホガニーやブラジルナッツ、イペといったアマゾン原産の木々で作るようにしたのだ。

■地域再生のカギに

 同地ではカカオの有機栽培も増えている。通常のカカオよりも高値で売れるオーガニックカカオは、利益率の高い国際高級チョコレート市場でも販売できる。

 パラ州はカカオの主要生産地の1つであることから、アマゾン原産のカカオを地域再生の目玉ととらえる見方が広がっている。

 パラ連邦大学(Federal University of Para)のセバスチャン・アウグスト(Sebastiao Augusto)教授は「カカオ生産が始まる前、森林は農業による破壊が進んでいた。現在は、アマゾン原産の農作物を植えることで生産者は収入を得、破壊が進んだ地域では森が再生されている」と評価している。(c)AFP/Yana Marull

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