【6月11日 AFP】焼けるような日差しにキラキラと翡翠色の湖面が輝く。長さ250キロメートル、幅60キロに及ぶケニアのトゥルカナ湖(Lake Turkana)は、世界最大の砂漠湖だ。

 砂漠の中に宝石のようにきらめく壮大なこの湖だが、湖畔で漁や放牧をして暮らす人々の生活は今、北の隣国エチオピアで建造が進むダムに脅かされている。

「かけがえのない湖だ。驚くばかりに美しい。でも60年後には人も魚も消えて、死んだ湖と化してしまうだろう」と、地元議員のジョゼフ・レクトン(Joseph Lekuton)氏は嘆く。

 トゥルカナ湖の水の80%は、北から流れ込むオモ(Omo)川が供給している。しかし2006年、エチオピアはオモ川上流でダム建造に着手した。ギベ3(Gibe III)ダムは、完成すれば高さ243メートルに達するアフリカで最も高いダムとなり、210平方キロメートルの貯水湖を生み出す。中国資本を得て既に5割が完成した。

 電力不足に悩むケニア政府は06年、ギベ3ダムが発電する電力のうち最大500メガワット(MW)をエチオピアから輸入することで合意したが、トゥルカナ湖畔に暮らす人々にとってこれは裏切り行為に思えた。

 トゥルカナ湖の一部を世界遺産に指定した国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)も、ダム計画を非難している。

■アラル海の悪夢、再来か

 圧力団体「トゥルカナ湖友の会(Friends of Lake Turkana)」を08年に創設した環境活動家のイカル・アンジェレー(Ikal Angelei)氏は、ダム貯水湖に水が溜まればトゥルカナ湖の水位は2~5メートル下がり、かつての状態に2度と戻ることはないだろうと語り、カザフスタンとウズベキスタンの間に横たわるアラル海(Aral Sea)の例を引き合いに出す。

 1960年代より綿花栽培のため水がくみ上げられたアラル海は、湖面が大幅に縮小し消失の瀬戸際にある。アンジェレー氏は警告する。「(トゥルカナ湖が)アラル海の再現になるのは確実だ。ダム建設に合わせてオモ川下流にサトウキビと綿花農場が作られ始めたが、これら全てが湖に流入するべき水を奪うだろう」

 ただでさえトゥルカナ湖には温暖化の魔の手が忍び寄っている。この地域では今や1年の大半で気温が40度を超えており、蒸発量の増加によって湖面はここ数年で数十メートル規模で縮小した。

■ダム完成前に調査を、建設後には協議組織を

 水の希少性が増す中、地域では家畜や牧草地に必要な水源地の管理をめぐる争いも増えている。前年東アフリカを襲った干ばつと飢饉では、トゥルカナ湖周辺はケニア国内で最も大きな被害を受けた。

 ケニア・ナイロビ(Nairobi)に本部がある国連環境計画(United Nations Environment ProgrammeUNEP)のアヒム・シュタイナー(Achim Steiner)事務局長は、トゥルカナ湖の生態系は「とても壊れやすい」と指摘する。しかし、ダムが湖に及ぼす影響について調べた資料は少ない。

「ダム建設と運用の結果、これまで数百年、数千年も続いてきた生態系が機能しなくなるのだとすれば、明らかに大きな問題だ。そんなことはケニア当局もエチオピア当局も望んでいない。実際にこれらのことが起きる前に、研究し、議論し、評価を行わなければならない」とシュタイナー氏。

 一方、もはやダム建設を中止することは不可能と考え、完成後に何ができるか、対策を検討し始めた活動家らもいる。幼少時は湖でよく遊んだという「トゥルカナ湖保護キャンペーン(Save Lake Turkana Campaign)」のギデオン・レパロ(Gideon Lepalo)主任は、未来の子どもたちが同じ楽しみを味わえないことに心を痛めつつ、次のように述べた。

「はっきり言って、建設費用の残りを中国が出してダムが完成するのは時間の問題だ。だから次の行動計画は、ナイル(Nile)川流域と同じような組織を設立し、上流で起きることに対する発言権を獲得することだ」 (c)AFP/Boris Bachorz

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