【6月9日 AFP】ポーランドでソフトウエア・エンジニアとして働くトメク・バブジチェク(Tomek Wawrzyczek)さん(43)の自宅のポストに、ある日突然、高さ50センチほどの苗木が届いた。

 驚きながらも喜んだバブジチェクさんは早速、この苗木を庭に植えたものの、送り主が誰なのかまるで見当が付かない。マイクロブログのツイッター(Twitter)に「苗木を送ってくれるなんて、どこの親切な人だろう。誰にお礼を言ったらいいのかな」と書き込んだ。

 送り主はまだ名乗り出て来ないが、包みから推測して、ポーランド全土に6万1000本の苗木を送ろうという市民活動の一端のようだとバブジチェクさんは言う。

 この活動は、同国マーケティング界のエグゼクティブとして知られるヤツェク ・ポバルカ(Jacek Powalka)氏(36)がインターネット上で開始した「PioSeki」という取り組み。カエデ、ブナノキ、オーク、トウヒの苗木を1人2本まで無料で注文できる。1本は自分用に、もう1本は友達にプレゼントしてもらおうという趣旨だ。

 ささやかな環境運動めいた経験をきっかけに、何か良いことをしたいという気持ちをみんなに持ってもらうのが目標という。

■ふと買った1本の苗木が空き地を公園に変えた

 ポバルカ氏がこのプロジェクトを思いついたのは、2007年の「晴れ上がった美しい土曜の朝」だった。花の苗を買いに園芸店へ足を運んだボバルカ氏は、花ではなく、落葉広葉樹の苗木を抱えて帰った。「いつもは自宅のベランダに花を植えるんですが、その年は花ではなく木を買うことにしたんです」

 社会活動に熱心な家庭に育ったボバルカ氏は、荒れ放題になっていた近所の空き地に買ってきた木を植えた。住民たちもやって来て植樹を手伝い、どんな木をどこへ植えるかアイデアを出し合った。空き地は公園へと姿を変え、ポーランド国内でニュースとなった。今では、夏の映画上映会などコミュニティー行事を開催する広場へと成長した。

 この経験を全国で分かち合わないのはもったいないと考えたボバルカ氏。自身の所属会社など複数の企業の支援を得て、今年5月に全国規模の植樹運動「PioSeki」を立ち上げた。すると個人だけでなく学校や病院、地域ごとでもプロジェクトへの参加が相次ぎ、国立公園からは2回目があるなら苗木を提供するとの申し出があった。

 1回限りの予定で始めたプロジェクトだが、英ロンドン(London)のポーランド人コミュニティーからも次回はぜひ参加したいとの打診があり、ボバルカ氏は来シーズンも実施できないか検討を始めたそうだ。(c)AFP/Anna Maria Jakubek