【5月16日 AFP】再生可能エネルギーに町の将来を賭けていくつかのプロジェクトを始めた米コロラド(Colorado)州ファウラー(Fowler)。しかし大型プロジェクトの中でこれまでに実現したものはない。町の執行部は交代し、最初の太陽光パネルを設置した企業は州政府の太陽光発電補助金がなくなった後に解散した。グリッド・ニュートラルという目標は道半ばで行き詰まった。

■計画通りには実現しない夢

 これは珍しい事例ではない。「BioTown USA(米国のバイオタウン)」というキャッチフレーズを掲げたインディアナ(Indiana)州レイノルズ(Reynolds)は2000年代半ば、レイノルズのエネルギーを全て再生可能エネルギーで自給するというプロジェクトに着手した。電力だけではなく暖房や自動車の燃料も再生可能エネルギーで賄うことを目標とし、ミッチ・ダニエルズ(Mitch Daniels)インディアナ州知事の支持も受けて、大型プロジェクトが次々とその形を現し始めた。

 レイノルズは嫌気性細菌を利用する汚物処理施設の建設計画に取り組んだ。半径15マイル(約24キロ)圏内に豚15万匹を抱えるレイノルズに適した計画だったが、物流がネックになった。

 2011年にレイノルズ近くの牛の牧場にある大型発電施設が稼動開始したが、その施設はレイノルズの外にあり、しかも発電した電気は既存の送電網に送られている。そこではレイノルズで消費されるより多くの電気を生み出しているので、ある意味で当初の夢は実現したと言えるかもしれない。ただ、それは当初の計画とは違っていた。

 発電施設は副次的な恩恵ももたらした。同地域での新プロジェクト実施に関心を示す企業が出てきているのだ。「(発電施設稼働の)広報効果は良い。レイノルズは人々の注目対象に残っている」と、レイノルズでバイオタウン計画が動き始めたとき町のプロジェクト責任者だったジョン・ハイムリック(John Heimlich)氏は語る。

■現実的な望みを

 ウェイン・スナイダー(Wayne Snider)氏は現在、コロラド州の他の町と共同で風力発電と太陽光発電を設置するプロジェクトを進めている。嫌気性細菌を使った設備の設置もまだあきらめていない。

「電力の自給ができなくても、今より安い料金で電力を提供できるようになれば、この町に移住したいという人が現れるくらい人々をひきつけるはずだ」とスナイダー氏は語る。ファウラーが計画通りに2000キロワットの太陽光発電所を建設していれば、電力料金は現在の1キロワット時当たり15セント(約12円)程度から6セント(約5円)にまで下げることができたはずだという。

 ファウラーとレイノルズから得られる教訓は、「現実的な望みを持とう」という単純なことかもしれない。メリーランド(Maryland)州プールズビル(Poolesville)のタウンマネージャー、ウェード・ヨスト(Wade Yost)氏は、町の中心部に省エネ型のLED街灯の設置を始めた。そこから再生可能エネルギープロジェクトを育てて行こうとしている。

 次のプロジェクトとして、町の下水処理場に1500キロワットの太陽光パネルの設置を計画している。年間6万5000ドル(約520万円)に上る下水処理場の電気料金を大幅に減らすことを目指して、企業からの提案を受け付けているところだ。「全部をつなげて、本物のグリーンコミュニティーを作り上げたいんだ」とヨスト氏は語った。(c)RenewableEnergyWorld.com/Dave Levitan/AFPBB News

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執筆者のデーブ・レビタン(Dave Levitan)氏は主にエネルギーと環境問題を扱うジャーナリスト。「Yale e360」「OnEarth」「IEEE Spectrum」などに寄稿している。再生エネルギー専門サイトRenewableEnergyWorld.comにこの記事の原文(英語)が掲載されています。