【5月14日 AFP】地球温暖化による海面上昇で脅威に直面している南洋の島国たちが、温暖化の原因とされる化石燃料を放棄し、クリーンエネルギーに転換することを誓っている。

 前週、カリブ海バルバドスの政府と国連開発計画(United Nations Development ProgramUNDP)が共催した会議で、いわゆる小島しょ国・地域の指導者たちは次々と目標を打ち出した。

■エネルギー自給自足へかじを切る島々

 参加国・地域首脳は6月にブラジル・リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)で開催される「国連持続可能な開発会議(UN Conference on Sustainable Development)」(リオ+20)を前に採択された声明で、島しょ国・地域が気候変動を緩和する「多大な努力」を払っているのに対し、国際社会の行動は「遅々として進まず、はなはだしく的外れ」だと批判。新エネルギー源は全島しょ国・地域が採用・入手・利用できるようにする必要があると訴えた。

 ニュージーランドとハワイの真ん中に位置し3つの環礁からなるトケラウ(ニュージーランド領)は、ココナツを原料とするバイオ燃料や太陽電池パネルを活用し、年内にエネルギー自給自足を達成する計画を打ち出している。

 同じく太平洋のクック諸島とツバルは2020年までに全電力を、カリブ海のセントビンセント・グレナディーンも同年までに電力の6割を、再生エネルギー発電に切り替えることを目指す。一方、東ティモールは首都ディリ(Dili)で2015年までに薪の使用を全面禁止し、やはり2020年までに電力の半分を再生エネルギー発電とする目標に掲げた。

 太平洋に散らばる15の島からなる計約220万平方キロメートルの国土に約2万人が暮らすクック諸島のヘンリー・プナ(Henry Puna)首相によれば、ニュージーランドに依存する同国国家予算の15%はディーゼル油の輸入費。国連調査でも、南太平洋の国々の中には国内総生産(GDP)の最大30%を石油輸入に費やしている例が指摘されている。遠く洋上にあるため、輸送コストが高くなるのだ。

 プナ首相は、この何千万ドルに上る予算を公衆衛生サービスや社会サービス、教育などに使いたいと訴える。太陽光パネルと風力タービンを導入する計画で、既に国内ほぼ全世帯に太陽熱温水器が設置されている。北クック諸島のラカハンガ環礁では日本の協力を得て2013年から着手され、南クック諸島はニュージーランドが資金を支援する予定だ。

■洋上で生きる先祖伝来の環境意識の高さ

 プナ首相いわくエネルギー源の転換は、2010年の総選挙の際に国民側から提起された問題だった。「わたしたち(陣営)は気付いていなかったが、人々の関心がある議題だとして取り上げたところ反応は素晴らしかった。わが国の国民はもともと環境意識が高いと思う。先祖代々ずっと大陸と切り離され、海の真ん中で生きることを学んできたからだろう。その遺産をわれわれは再び活用しようとしているのだ」

 北米や欧州諸国の多くでは陸上・洋上に登場し始めた風力タービンへの抵抗がある。クック諸島でも全く抵抗がないわけではない。しかしプナ首相は「こうした設備の恩恵に人々が気付き、実際に目にすれば、問題はそう多くないだろう」と自信を見せた。(c)AFP