【3月2日 AFP】イタリア・トスカーナ(Tuscan)州ピサ(Pisa)近郊にあるコリニョラ(Colignola)湖では、水面に浮かぶ多数の「鏡」が冬の日差しにまぶしく輝いている。これは、フィレンツェ大学(Florence University)のマルコ・ロサクロット(Marco Rosa-Clot)教授の研究チームが開発した、費用対効果の高い浮体型回転式ソーラーパネル「Floating Tracking Cooling ConcentratorFTCC)」の試作品だ。

「あなたが今立っているのは、水に浮いて太陽光を追いかける発電システムの上です。世界初の太陽光発電システムですよ!」と、代替エネルギー開発企業Scintecの社長でもあるロサクロット教授は誇らしげに語った。

 湖面に咲いた花びらのようなこの画期的な浮体型太陽発電システムには、既に海外からも多くの問い合わせがあり、韓国企業Techwinとは3年のライセンス契約を交わしたという。

 ビル屋上や平野に設置する従来型のソーラーパネルは、貴重な農地を犠牲にしたり、美観を損ねるなどの点が問題視されている。また、太陽光が強すぎると過熱してしまいエネルギー変換効率が落ちるという難点もある。浮体型ソーラーパネル「FTCC」なら、これらの問題を解決できる。

 FTCCは人工貯水池や使われなくなった採石場など、これまで太陽光発電に使われてこなかった場所の活用を目的に開発された。水に浮かべて使うため、ソーラーパネルが冷却され過熱を防ぐ。反射体は日中、太陽の動きに応じて入光率が最大になるよう角度を変えるため、既存の太陽光発電システムよりも効率的だとロサクロット教授は説明する。

 コリニョラ湖では、FTCCの効率性を確かめるパイロット実験が行われている。試作品の発電能力は30キロワット(KW)で、20~30世帯の使用電力をまかなえる程度にすぎないが、標準仕様は集合住宅なら1戸につき3KWを提供できる発電能力があるという。

 価格は、標準仕様が設置費込みでKW当たり1600ユーロ(約17万3000円)、試作品と同タイプなら4万8000ユーロ(約520万円)を見込んでおり、Scintecによれば地上設置する従来型より20%のコスト削減が可能だという。(c)AFP/Sonia Logre