【2月29日 AFP】南アフリカ・西ケープ(Western Cape)州の農園。赤く茂ったルイボスの枝を農場労働者たちが鎌で刈り取っていき、日なたに並べて乾燥させる。

 こうして作られるルイボスティーは、世界で増え続けるルイボスティー・ファンの喉をうるおしている。だが、農園がいま最も懸念しているのが、ルイボスが依存する繊細な生態系を破壊しかねない気候変動だ。

 ルイボスティーの年間輸出量は、過去13年間で4倍にも増えた。健康上さまざまな利点があると考えられ、すっきりした味わいも手伝って、ルイボスティーは多くの国々で今はやりの飲み物となっている。カフェインを含まず、タンニンの量も極めて少ない。

 ルイボスが育つ地は、世界でも西ケープ州のセデルバーグ(Cederberg)山脈一帯だけだ。この乾燥した砂だらけの土地では、植物はほとんど育たない。ルイボスだけが繁茂し、土壌中の微生物と共生している。これまで、オーストラリア、米国、中国でルイボスの栽培が試みられたが、いずれも失敗に終わっている。

■温暖化と乾燥でルイボスは絶滅?

 ウィレム・エンゲルブレヒト(Willem Engelbrecht)氏は、西ケープ州・クランウィリアム(Clanwilliam)近くにあるルイボスティー農場「Groenkol Rooibos Tea Estate」を父から受け継いだ。同氏は、この10年間に天候が極端に変わったと感じている。

 もともと、この地域は厳しい気候条件下にあった。冬には気温が氷点下まで下がる一方、夏の気温は48度まで上がる。だが、エンゲルブレヒト氏によると、このところ夏はますます暑く、冬は一層、乾燥するようになっており、これに合わせて農法も変更せざるをえなくなっているという。

 だが、このまま気温の上昇が続けば、エンゲルブレヒト氏のような農園経営者の手にも負えなくなり、6億ランド(約65億円)規模のルイボスティー産業そのものが危機に陥る恐れがある。

 南アの科学産業研究会議(Council for Scientific and Industrial ResearchCSIR)の予測によると、今後の100年間で西ケープ州は厳しい気候変動の影響に見舞われる。大半の地域で気温が3度上昇し、乾燥化も進む。同州だけでなく、南アの内陸西部や沿岸地域の未来図も明るいものではないという。


■ルイボス産業関係者たちは前向き

 それでも、ルイボスティーで生計を立てている人々は、前向きな姿勢を保とうとしている。

 ルイボスティー産業は好景気に沸き、生産高は年間1万2000トン。うち半数が輸出されている。ティーカップ48億杯分の需要を満たすには十分な量だ。同産業は推定4500人の雇用も生みだしている。

「世界各国で人気を確立したルイボスティーだが、ルイボスの生産地は、ごくわずか。だから、この産業は相乗的に成長するはず」と話すエンゲルブレヒト氏。同氏ら経営者にとって重要な問題は、気候変動でルイボスが絶滅する前に、ルイボスティーのブームが、あとどれくらい続くのかということだ。(c)AFP