温暖化による酷暑で小麦が老化、2度上昇で収穫2割減
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【1月30日 AFP】地球温暖化によって熱波や酷暑がより厳しくなると、小麦が「老化」し、世界的に収穫高が減少することを示す研究結果が、29日の英科学誌「ネイチャー・クライメートチェンジ(Nature Climate Change)」に発表された。
研究チームは、コンピューターモデルに基づく現在の予測では、温暖化が進んだ場合にこのプロセスが加速する可能性が過小評価されていると警告している。
栽培面積が温帯の2億2000万ヘクタール以上を占める小麦は、地球上の最も広範囲で栽培されている作物だ。メキシコにある国際トウモロコシ・コムギ改良センター(International Maize and Wheat Improvement Center、CIMMYT)によると、国によっては摂取カロリーの最大50%、タンパク栄養の20%を小麦に頼っている。
2010年には小麦輸出国のロシアで干ばつや森林火災が起き、世界の小麦価格が2年にわたって高騰。気候によって崩壊する国際供給網の脆弱さを浮き彫りにした。
■気温2度上昇で収穫量2割減
温室効果に関するこれまでの実験では、季節外れの高温、特に作物の生育期の終盤に異常高温が起きると、作物が老化することが分かっている。植物が耐えられる範囲を超える高温が、光合成を行う細胞器官を破壊してしまうのだ。
米スタンフォード大学(Stanford University)のデービッド・ロベル(David Lobell)氏率いるチームは、インドのヒンドスタン平野(Indo-Ganges Plains)の衛星データ9年分を精査し、統計的手法を用いて、高温が小麦に及ぼした影響だけを抽出した。
すると、気温が長期平均よりも2度上がると小麦の生育期間が9日短くなり、総収穫量が20%減っていたことが明らかになった。
世界各国は国連気候変動枠組み条約(UN Framework Convention on Climate Change、UNFCCC)の下、温暖化による有害な影響を避けるためには、気温上昇を産業革命前のレベルから2度以内に抑えるという目標を掲げている。だが、現在の上昇傾向が続けば、気温は目標値の2倍まで上昇すると研究チームは警告している。つまり「世界的に気温が4度上昇するという、かつては極端な場合として考えられていたシナリオが、2060年にも現実となる」という。
■病気に弱くなる恐れも
小麦は、気候変動による別の脅威にもさらされている。北アフリカ、中東、中央アジアなどで、今よりも攻撃性の高い「小麦さび病」の新種の菌株によって、収穫高が最大40%減少するというのだ。地球温暖化で降雨パターンも変動しやすくなっており、そのため小麦が弱りつつ一方で、新種の菌株は前例のない高温にも耐えるよう適応していると、研究チームは指摘している。
前年11月、国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、人間が引き起こした気候変動によって熱波や酷暑は頻度も激しさも増しており、そうした極端な気候が将来増えることはほぼ確実だと結論付けた。1000ページに及ぶ報告で、IPCCは温暖化ガスの排出が衰えることなく続けば、2050年までに5年置き、21世紀末までには1年置きか毎年というペースで、20年に1度の酷暑に襲われるようになると警鐘を鳴らしている。(c)AFP/Marlowe Hood
研究チームは、コンピューターモデルに基づく現在の予測では、温暖化が進んだ場合にこのプロセスが加速する可能性が過小評価されていると警告している。
栽培面積が温帯の2億2000万ヘクタール以上を占める小麦は、地球上の最も広範囲で栽培されている作物だ。メキシコにある国際トウモロコシ・コムギ改良センター(International Maize and Wheat Improvement Center、CIMMYT)によると、国によっては摂取カロリーの最大50%、タンパク栄養の20%を小麦に頼っている。
2010年には小麦輸出国のロシアで干ばつや森林火災が起き、世界の小麦価格が2年にわたって高騰。気候によって崩壊する国際供給網の脆弱さを浮き彫りにした。
■気温2度上昇で収穫量2割減
温室効果に関するこれまでの実験では、季節外れの高温、特に作物の生育期の終盤に異常高温が起きると、作物が老化することが分かっている。植物が耐えられる範囲を超える高温が、光合成を行う細胞器官を破壊してしまうのだ。
米スタンフォード大学(Stanford University)のデービッド・ロベル(David Lobell)氏率いるチームは、インドのヒンドスタン平野(Indo-Ganges Plains)の衛星データ9年分を精査し、統計的手法を用いて、高温が小麦に及ぼした影響だけを抽出した。
すると、気温が長期平均よりも2度上がると小麦の生育期間が9日短くなり、総収穫量が20%減っていたことが明らかになった。
世界各国は国連気候変動枠組み条約(UN Framework Convention on Climate Change、UNFCCC)の下、温暖化による有害な影響を避けるためには、気温上昇を産業革命前のレベルから2度以内に抑えるという目標を掲げている。だが、現在の上昇傾向が続けば、気温は目標値の2倍まで上昇すると研究チームは警告している。つまり「世界的に気温が4度上昇するという、かつては極端な場合として考えられていたシナリオが、2060年にも現実となる」という。
■病気に弱くなる恐れも
小麦は、気候変動による別の脅威にもさらされている。北アフリカ、中東、中央アジアなどで、今よりも攻撃性の高い「小麦さび病」の新種の菌株によって、収穫高が最大40%減少するというのだ。地球温暖化で降雨パターンも変動しやすくなっており、そのため小麦が弱りつつ一方で、新種の菌株は前例のない高温にも耐えるよう適応していると、研究チームは指摘している。
前年11月、国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、人間が引き起こした気候変動によって熱波や酷暑は頻度も激しさも増しており、そうした極端な気候が将来増えることはほぼ確実だと結論付けた。1000ページに及ぶ報告で、IPCCは温暖化ガスの排出が衰えることなく続けば、2050年までに5年置き、21世紀末までには1年置きか毎年というペースで、20年に1度の酷暑に襲われるようになると警鐘を鳴らしている。(c)AFP/Marlowe Hood