【1月10日 AFP】フィリピン中部のリゾート地・セブ(Cebu)島で、同島近海に生息する世界最大の魚類ジンベエザメへの餌やりに対する議論が沸騰している。現地当局が7日、発表した。

 セブ島南部の港町オスロブ(Oslob)のロナルド・ガレン(Ronald Guaren) 町長は、ジンベエザメへの餌やりは無害で観光産業の振興に役立つとする一方、環境活動家はジンベエザメにダメージを与えるとして中止を勧めている。

 オスロブの漁民は1980年代からジンベエザメに小エビを与えてきたが、最近はこの餌やりでジンベエザメを海面におびき寄せ、観光客へのサービスに利用している。

 だが沿岸海洋管理当局地域責任者のエドムンド・アレガダス(Edmundo Arregadas)氏は、ガレン町長に餌やりの中止を勧告したという。同氏はAFPに「ジンベエザメの本来の生態に悪影響を及ぼす可能性があると指摘した」と語った。餌やりのせいで、餌を人間に依存してしまうようになるという。

 さらに、他の船に近づいて衝突する危険性もある。同氏によると、ジンベエザメを狙う密漁者に捕獲されやすくなる可能性もあるという。

 これに対しガレン町長は、長年の餌やりで死んだジンベエザメは見られず、今も人間に頼らず自力で餌をとれていると主張している。

 同町長は自治体が餌をやれる漁民の数を絞り、指定された海域内で午前中のみ餌をやるよう規制したと語った。
 
 同町長によると、観光客の餌やりやジンベエザメとの共泳も禁じ、船舶用プロペラや衝突でサメを傷つけないよう、餌やりには手こぎボートを使い、サメと一定の距離を保つよう求めているという。
 
 ジンベエザメは、成長すると全長12メートルほどになるが人を襲うことはなく、海中の小さな生物を食べて生きる。国際自然保護連合(International Union for Conservation of NatureIUCN)はジンベエザメを野生絶滅の高い危険性がある「危急種」と定義し、フィリピンはジンベエザメの捕獲・殺りくを禁止している。(c)AFP