【11月30日 AFP】オーストラリアの農業関連団体は28日、同国の大農業地帯「マレー・ダーリング流域(Murray-Darling Basin)」の水量減少対策として政府が打ち出した水使用制限案に対し、地域社会を破壊し食料価格の高騰をまねくと厳しく批判した。

 マレー・ダーリングはクイーンズランド(Queensland)州からニューサウスウェールズ(New South Wales)州、ビクトリア(Victoria)州、サウスオーストラリア(South Australia)州にまたがる100万平方キロメートル以上の地域で、オーストラリアの食料の3分の1以上を生産している。

 だが干ばつと洪水の影響を受けやすく、また長年、流域での水の使いすぎが問題になっており、オーストラリア政府は、マレー・ダーリング流域の水使用を7年かけて段階的に、年間2750ギガリットル削減する対策案を発表した。

 この発表に、全国農業者連盟 (National Farmers' FederationNFF)のマット・リネガー(Matt Linnegar)会長は「計画案は、環境が優先で住民や地域社会を二の次にしている」と批判した。

 また、かんがい耕作者の評議会「National Irrigators' Council」のスチュアート・エリス(Stewart Ellis)氏は「計画案がこのまま採用されるのであれば、水に存続がかかっている地域社会を経済的、社会的に破壊する責任を(環境)大臣が負うことになるだろう」と語った。

■環境活動家からも批判

 一方、環境活動家からも批判の声があがっている。オーストラリア環境保護財団(Australian Conservation FoundationACF)は、長期的な干ばつと小雨による塩分濃度の増加により、マレー・ダーリング流域の土地はひどくやせており、政府案では不十分だと批判した。

 ACF広報のポール・シンクレア(Paul Sinclair)氏は、「計画案は、マレー川の河口から塩分をはき出し、死に瀕した湿地帯を生き返らせ、この国の活力源であるマレー・ダーリングの流れを維持するには不十分だ」と語った。

 昨年、一次草案が発表された際には、激怒した農家が同草案コピーを燃やす行動に出た。トニー・バーク(Tony Burke)環境相は、最新版の草案について、地域社会に影響を及ぼすことになることを認めた上で、次の干ばつの際に、前回の干ばつ時のような「悪魔的な結果」が起きないよう、河川を回復させることを目指したものであると理解を求めた。(c)AFP