【7月26日 AFP】自然分解されにくく、生物に蓄積して人体や生態系に害を及ぼすとして、2001年に採択されたストックホルム条約(Stockholm Convention)で製造や輸出入が禁止された残留性有機汚染物質(Persistent Organic PollutantsPOPs) が、地球温暖化の影響で、蓄積していた北極圏の氷原や氷雪から溶け出しているという報告が24日、科学誌「Nature Climate Change」に発表された。

 よく知られているDDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)などのPOPsは、ストックホルム条約以前は農薬や殺虫剤に広く使われていた。

 POPsは非常に分解されにくく、自然分解には数十年かかる。また生物の体内に蓄積しやすく、食物連鎖で上位に行くほど濃度が高くなり、上位の生物の生殖能力に脅威を与える。さらには、水に不溶性で揮発性も高いため、気温が上がれば土壌や水から容易に大気中に広がっていく。

 24日に発表された研究では、POPsのうちDDT、HCH(ヘキサクロロシクロヘキサン)、シス-クロルデンの3種類の大気中濃度を、1993年から2009年にかけて、ノルウェーのスバルバル諸島(Svalbard Islands)と、カナダの北極圏にある観測所で観測した。

 すると、POPsの一次的な排出については、ストックホルム条約でPOPsの製造や輸出入が禁止された以降は長期的な減少傾向がみられた。

 しかし同じデータを使って、地球温暖化がPOPsの蓄積に与える影響のシミュレーションを行ったところ、もっと複雑で憂うべき状況が浮かび上がった。二次的な排出、つまり北極圏の氷や雪に閉じ込められていたPOPsが溶け出す量が、温暖化の影響でわずかながら増える傾向を見せていたのだ。

「気候変動の影響で、過去20年の間にさまざまな種類のPOPsが北極圏の大気に再排出されている」と報告は分析している。(c)AFP