【7月16日 AFP】ホエールウオッチングと捕鯨は「完璧に共存できる」─英領チャネル諸島(Channel Islands)ジャージー(Jersey)島で開かれていた国際捕鯨委員会(International Whaling CommissionIWC)年次総会最終日の14日、アイスランドの委員が自国の「見て食べて楽しむクジラ観光」について言及した。

「ホエールウオッチングに参加した観光客の多くが、終わってからレストランで鯨肉を味わっている。ふたつが同時に成り立つことを非常によく証明していると思う」と語ったのは、アイスランドのトーマス・ハイダー(Tomas Heider)委員。捕鯨はホエールウオッチングの収入源を奪っているのではないかという意見に対する反論として発言した。

 IWC加盟国の多く、特に南米各国は、将来的にホエールウオッチングから得られる収益は商業捕鯨による収益をはるかに上回り、両者は両立しないと主張している。

 しかし、アイスランドではこのふたつが相乗効果を生んでいるというのが、ハイダー委員の見解だ。「近年、アイスランドの捕鯨頭数は増えているが、ホエールウオッチングにも過去ないほど多くの観光客が訪れている。ふたつは完璧に共存できる」

 ノルウェー同様、アイスランドは、1986年の商業捕鯨の一時停止(モラトリアム)以降も商業捕鯨を行っている。捕獲しているのはナガスクジラとミンククジラで、どちらも近年、大きく捕獲数が増えている。

 ナガスクジラについては20年ほど捕獲していなかったが、2009年に約125頭、2010年に150頭を捕獲した。またミンククジラは2000年代前半には年間平均40頭程度だったのが、最近は年間60~80頭となっている。アイスランド政府は、北大西洋のクジラの生息数は多く、この程度の捕獲数で減ることはないと主張している。

 海洋政策学の専門誌「マリーン・ポリシー(Marine Policy)」に2010年に発表された研究によると、クジラ観光産業は2009年に20億ドル(約1600億円)以上を生み出し、年間成長率は約10%だという。(c)AFP