【7月16日 AFP】サメやライオン、オオカミといった大型の捕食動物の数は世界全体で減少傾向にあるが、その結果、地球の生態系全体に異常な変化が起きているとする論文が14日、米科学誌サイエンス(Science)に発表された。

 6か国22研究機関の科学者たちがまとめたこの論文によると、地球は現在、有史以来6度目の大量絶滅期の最中にある。しかし、過去の大量絶滅とまったく違うところは、今回は完全に人類の活動によって引き起こされているという点だ。

 土地利用の変化や気候変動、公害や汚染、乱獲や密漁による動物や魚の減少などを通じて、生態系の頂点である大型の捕食動物が消滅しつつある。研究は「生態系の頂点の消滅は、自然界に人類が与えたなかで最も広範囲にわたる影響だろう」と説明している。その影響は陸にも海にも現れている。

■生態系のバランスが崩れる

 例えば米ユタ(Utah)州では、クーガーが減ったためにシカが爆発的に増えてしまった。増えたシカがどんどん植物を食べた結果、各地の小川の流れが変わり、生物多様性も減少してしまった。

 またアフリカでは、密漁によってライオンとヒョウがいなくなった結果、アヌビスヒヒの数が急増し、このヒヒたちの腸内寄生虫が近くに住む人間に感染している例もある。

 一方、海では20世紀の商業捕鯨でシャチの食性が変化し、以前よりも多くのアシカやアザラシ、ラッコなどを食べるようになり、これらの動物の生息数が劇的に減った。

■人類に直接影響する問題

 過去数世紀、大型捕食動物の減少が引き金となり、疫病の流行や生物の個体数の激減、生態系の変化などが起こっており、将来的にさらなる研究が必要だとこの論文は警告している。

 論文の主著者である米カリフォルニア大学サンタクルス校(University of California at Santa Cruz)のジェームズ・エステス(James Estes)教授は「科学者や資源保護の関係者は、主に下位から上に向かって生態系を検討してきたが、それでは非常に複雑な方程式の半分しか見ていないことになる」と説明する。

「これらの発見は、食物連鎖の頂点が自然の生態系の構造、機能、多様性に多大な影響をもたらしていることを示している。こうした捕食動物は、食物連鎖のなかで機能することで最終的に人類を守っている。これは彼らだけの問題ではない。私たち自身の問題だ」(c)AFP