海洋のプラスチック廃棄物、クジラに致命的な影響か IWC研究
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【7月11日 AFP】海洋に投棄される年間数百万トンのプラスチック廃棄物が、クジラに致命的な脅威となる恐れがあると指摘した研究結果が、英領チャネル諸島(Channel Islands)ジャージー(Jersey)島で11日から4日間の日程で開催される国際捕鯨委員会(International Whaling Commission、IWC)の会議で発表される。
論文を執筆したのは、IWC科学委員会メンバーのマーク・シモンズ(Mark Simmonds)氏。同氏が過去20年の調査論文を分析したところ、クジラやイルカなど80種が含まれるクジラ目が、海洋投棄物により健康を害したり死んだりした例が数百件あった。
これまでも、プラスチック製の袋や漁具が鳥やカメ、小型のクジラなどにからまることの危険性は知られていたが、さらに専門家らは、大型の水生哺乳類がプラスチック廃棄物をのみ込むと、障害を受けたり死んだりする危険があると指摘している。
■すでに多数のクジラが被害に
こうした例は、これまでも多数見られてきた。
2008年、米カリフォルニア(California)州沿岸に漂着したマッコウクジラ2頭の内臓から、大量の漁網や合成繊維などが見つかった。1頭あたり250キロも投棄物をのみ込んでおり、1頭の胃は破裂していた。また、もう一頭のクジラも、消化管にプラスチック廃棄物が詰まって、食料を十分にとれない状態だった。
2009年、イタリア南部アドリア海(Adriatic Sea)沿岸に漂着したマッコウクジラ7頭の胃腸からも、釣り針やロープ、プラスチック廃棄物が大量に見つかった。
2002年にも、仏ノルマンディー(Normandy)地方沿岸に流れ着いた死んだクジラの胃から、1トン近いプラスチック廃棄物が取り出された。中には英国のスーパーチェーンのレジ袋も含まれていた。
目下のところ、クジラにとって最大の脅威は、誤って漁網に捕獲されることや気候変動で、プラスチック廃棄物が及ぼす脅威の規模や深刻度はまだわかっていない。
取材に応じたシモンズ氏は、「海洋廃棄物が他の脅威と比べて、どの程度の害なのかはまだ分かっていないが、残念ながら、この脅威は拡大しており、今後より大きな影響を及ぼすようになることは間違いない」と述べた。(c)AFP/Marlowe Hood