【7月8日 AFP】北極圏のホッキョクグマのDNA調査で、全てのホッキョクグマのルーツが、2~5万年前に現在のアイルランドに生息していた1頭のメスのヒグマにたどり着くことが明らかになった。米ペンシルベニア州立大(Pennsylvania State University)などの国際研究チームが7日、米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に発表した。

 研究チームはロシア、カナダ、グリーンランド、ノルウェー、米アラスカ(Alaska)州にまたがる北極圏全体から、現存する個体と過去の個体のDNAサンプル242頭分を集めた。母性遺伝する遺伝物質ミトコンドリアを分析したところ、全てのルーツが2~5万年前に現在のアイルランド大西洋岸に生息していた共通の祖先に行き着いた。

 また、近年問題視されているホッキョクグマとヒグマの交配が、過去10万年にわたって定期的に行われていたことも示された。

 気候変動によって既に絶滅の危機に瀕しているホッキョクグマにとって、こうした異種交配は純粋な遺伝子配列の保存という意味で脅威と考える科学者もいる。しかし、今回の研究によって、ホッキョクグマの進化の過程で異種交配が良い影響をもたらしてきた可能性が出てきた。

 研究チームでは、さまざまな生物種が生き残る上で交配種が果たしてきた役割が正しく評価されていない可能性があるとして、ホッキョクグマの保護の取り組みを見直し、純粋種だけでなく交配種も保護対象に含めるべきだと指摘している。(c)AFP/Marlowe Hood

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