【6月21日 AFP】海洋汚染と地球温暖化は、世界中の海で、海洋生物を過去5500万年見られなかった大量絶滅へと追いやっているとする報告書が、20日公開された。

 報告書は、海洋研究国際計画(IPSO)の後援のもと、世界トップクラスの海洋専門家27人が今年4月に英オックスフォード大(Oxford University)に集まり、最近の研究を総括した際にまとめたもの。

 海の環境を悪化させる要因は主に3つある。温暖化、酸性化、低酸素化で、いずれも人間活動が直接的にもたらしたものだ。

 これまでは、これらの要因は個別に研究されることが多かった。これらの要因がどのように相互作用するかが理解されるようになったのは近年になってのことだ。

 そして、最近の研究を総括した専門家らは、海洋環境が国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が2007年に発表した最悪のシナリオの場合と同じか、それを上回る速度で悪化していることを見出した。

 このことは、生物学的要因と化学的要因が複雑に絡み合った「地球系」の広範な崩壊をもたらす前兆ととらえることができるかもしれない。今の海洋環境の状況は、深海生物の50%以上が死滅した5500万年の「暁新世/始新世境界温暖化極大イベント(PETM)」の前の状況と多くが同じだという。

「われわれはこれまで、総合的なリスクを過小評価してきた。個別の要因が重なると、海洋環境は最終的に、それぞれの影響を足したものよりも大きく悪化する。そして海洋環境は予想を超えるスピードで悪化しつつある」と、IPSOを率いるオックスフォード大のアレックス・ロジャース(Alex Rogers)教授は言う。

■数々の脅威

 海の酸性化へつながる連鎖反応は、地球の気候系に大量の二酸化炭素(CO2)が流入することが発端となる。海は大気中のCO2の25%以上を吸収する巨大なスポンジの役割を果たすが、飽和状態になると、海、ひいては地球上のすべての生態系の微妙なバランスが崩れることになりかねない。

 報告書によると、海に吸収されるCO2の割合は、既にPETMの時をはるかに上回っているという。

 また、海洋汚染の影響も大きい。例えば窒素を多く含む化学肥料や病原菌、環境ホルモンが海に流入することで、サンゴ礁が大量死している。サメなど1部の大型魚類の乱獲により、海の食物連鎖が大きく崩れ、藻やクラゲなどが異常繁殖している。

 報告書を共同執筆した国際自然保護連合(IUCN)のダニエル・ラフォリー(Daniel Laffoley)氏は次のように語った。「われわれは、(海洋生物の大量絶滅の危機に)時間をかけて対処できる最後の世代になるかもしれない」(c)AFP/Marlowe Hood