【5月31日 AFP】ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相は30日、国内にある17基すべての原子力発電所を2022年までに停止すると発表した。

 メルケル首相は会見で、「福島(第1原発)の事故は、これまでとは異なる方法でリスクに対処する必要性があることを教えてくれた」と述べ、「われわれが再生可能エネルギーの新たな時代を切り開く先駆者になれると信じている」と続けた。

 17基のうち、7基は老朽化のため、1基は技術的な問題のため既に運転を停止している。残り9基のうち、6基は2021年までに、建設年度が最も新しい3基は2022年までに停止する予定だ。

 この決定はドイツの電力需要のうち原子力が賄ってきた22%をほかのエネルギー源に切り替える必要があることを意味している。複数のエネルギー会社がこの決定について政府を相手取って訴訟を起こす可能性もある。

 また、高レベル放射性廃棄物の恒久的な貯蔵施設をどこに確保するか、二酸化炭素の排出量をいかに削減するかなど、数々の難題が横たわっている。

■各国の反応

 フランスは、ドイツの決定を「尊重する」としながらも、原子力を放棄するつもりはないとあらためて主張した。フランソワ・フィヨン(Francois Fillon)首相は、「原発は未来に向けてのソリューションだ」と高らかに宣言。政府は、国内に原発が58基もあるおかげで電気料金が欧州他国の平均値より約40%も安いと強調してもいる。

 スウェーデンは、ドイツの決定により各国のエネルギー政策の足並みが乱れ、気候変動が配慮されない結果を招くと、批判的に見ている。

 一方、ポーランドと原発を持たないオーストリアは、ドイツの決定を歓迎している。

 オーストリアのニコラウス・ベルラコビッチ(Nikolaus Berlakovich)農林・環境・水利相は、「世界屈指の先進工業国が下した決断は、大変強い影響力を持つだろう。原発をなくすことは現実的に可能であることを世に知らしめた」と述べた。ポーランドは、2020年に国内初の原発を稼働させる計画を見直すと表明している。

 米国と英国は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスを抑制するため、原発を新たに建設することを明らかにしている。

 イタリアは、チェルノブイリ(Chernobyl)原発事故翌年の1987年、原発をすべて廃炉にした。スイスは前週、原発を2034年までにすべて停止すると発表している。(c)AFP/Deborah Cole