【4月25日 AFP】高さ8メートルの筒400本が竹林のようにそびえ立つスペイン東部の施設で、「未来の燃料」が産声を上げた――かもしれない。科学者たちが期待をかけるのは、植物プランクトンと工場から排出される二酸化炭素(CO2)を組み合わせたバイオ原油だ。

 緑色の筒の林は、アリカンテ(Alicante)郊外の平野に、セメント工場に併設して立っている。筒の中は数百万の微細藻類で満たされており、セメント工場から排出されるCO2がパイプラインで筒へと送られてくる。

 まだ実験段階のこのプロジェクトは5年前に始まった。スペインとフランスの研究者たちが、ベンチャー企業「バイオ燃料システム(Bio Fuel SystemsBFS)」で研究を続けている。代替エネルギー需要が高まる中、化石燃料なら産出までに数百万年の年月がかかる原油の生成過程を、高速化して再生しようという試みだ。

「植物プランクトンが原油に変化した数百万年前の状況を再現しようとしている。こうすることで、今日の原油と同じような油を得ることができる」と、研究者のEloy Chapuli氏は語った。

■光合成を活用した「エコ原油」

 植物プランクトンは筒の中で、工場から排出されたCO2を利用して光合成を行い、高速に増殖する。この植物プランクトンがたっぷり濃縮された液体を毎日少しずつ取り出し、抽出・ろ過を行ってバイオマス(生物由来資源)とし、バイオ原油を作り出している。

 このシステムには、温室効果ガスであるCO2を吸収するという利点もある。

「エコロジー原油だよ」と、中東油田での勤務経験をもつBFS創設者のベルナルド・ストロイアッツォムジャン(Bernard Stroiazzo-Mougin)会長は述べた。「工業生産を開始するのはまだ5~10年先」としつつ、ポルトガルのマデイラ(Madeira)島でも同様のプロジェクトを開始したいという。

 同会長によると「スペイン南部のやせた大地を活用して50平方キロメートルの施設を作れば、日量125万バレルの生産ができる」。この生産量は、イラクが輸出する原油の日量に相当する。「人工油田の開設をめぐり、数か国と資金援助の交渉をしたい」と、同会長は語った。

■藻類から原油、世界で広がる試み

 世界各地でも、藻類を利用したエネルギー開発が進められている。

 ドイツでは、スウェーデンの電力会社バッテンファル(Vattenfall)が前年、石炭の火力発電所からのCO2を藻類で吸収する実験プロジェクトを立ち上げた。

 米石油大手エクソンモービル(ExxonMobil)は、藻類からの原油生産の研究に6億ドル(約490億円)を投資する計画だ。

 この藻類を使った原油には、特に航空業界が、従来の原油の代替エネルギーとして高い関心を示している。(c)AFP/Virginie Grognou

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