【4月22日 AFP】米コロンビア大学(Columbia University)の研究チームは21日、過去50年間のオゾン層と気象データを分析した結果、南極上空のオゾン層が気候変動の重要な要因となって、南半球で降雨を増加させていたとする論文を米科学誌「サイエンス(Science)」に発表した。

 極域でのオゾン層破壊と赤道付近にまでいたる地域の気候変動を関連付けた研究は初めて。研究チームは、世界各国の気候変動政策において、北極での氷床溶解や温室効果ガスの問題と同様に、オゾン層の問題も考慮する必要があると訴えている。

 オゾンホールの存在が明らかになったのは1980年代。フロンガスの多用が原因だったことから、1989年にはクロロフルオロカーボン(CFC)など、オゾン層を破壊するおそれのある物質を規制するモントリオール議定書(Montreal Protocol)が発効。196か国が締約した。

 オゾンホールは2050年ごろまでに消失するとみられているが、コロンビア大の研究者たちは、オゾンホールの問題が解決したわけではないと警告する。

 コロンビア大の研究チームは、カナダの中層大気モデルと米国立大気研究センター(National Center for Atmospheric ResearchNCAR)による地域大気モデルを参照した。

 4つの実験で海氷、地表温度、降水量、オゾンホールに関するデータを比較分析した結果、オーストラリア東部、インド洋(Indian Ocean)南西部、南太平洋収束帯(Southern Pacific Convergence Zone)で夏季にみられる豪雨には、オゾンホールが関連していることが分かった。

 研究チームの1人、ロレンゾ・ポルバーニ(Lorenzo Polvani)氏は、「われわれの研究はオゾンホールの影響が広範囲に及ぶことを示した。気候システムにおいて、オゾンホールは大きな役割を果たしている」と話す。

 今後も研究チームは、各地で大規模洪水や地滑りなどの被害をもたらしている「異常な降水現象」について調べる計画だという。(c)AFP