【4月5日 AFP】国際エネルギー機関(International Energy AgencyIEA)のファティ・バイロル(Fatih Birol)主席エコノミストは4日、東京電力(Tokyo Electric Power Co.TEPCO)福島第1原子力発電所の事故を受けて世界の原子力発電の伸びが鈍化すれば、気候変動対策に深刻な打撃を及ぼすことになるとAFPに語った。

 フランス・パリ(Paris)でAFPの電話取材に応じたバイロル氏は、「原子力は、グローバルなエネルギーミックスの中で非常に重要な役割を果たしている」と指摘し、各国政府は原発の廃炉を繰り上げたり新規建造を中止したりする前に、そのことが及ぼす影響について検討しなければならないと述べた。

 IEAは前年の年次報告書で、2035年までに世界の原子力発電容量は現状の390ギガワットから360ギガワット増の750ギガワットに達するとの見通しを示していた。しかし、福島原発事故を受けて各国政府はより慎重な姿勢を取り始めており、IEAはこの見通しを半分の180ギガワット増に下方修正した。

 バイロル氏は、原子力の代替として石炭や天然ガス、再生可能エネルギーを使うことになれば、二酸化炭素(CO2)排出量は5億トン増えると指摘。これはCO2排出量の5年分の増加量と同等で、気温上昇を2度以内に抑える目標の障害となるだろうと述べた。

「2035年までに到達するはずだったレベルに、5年早い2030年の時点で到達してしまうことになり、気候変動にとっては明らかに悪いニュースだ。目標達成はいっそう困難になるだろう」と、バイロル氏は語った。(c)AFP