【3月2日 AFP】環境への関心の高まりを受け、過去20年間にできた環境関連の条約は500を超えるとみられている。だが、なかには無駄で、かえって環境保護の妨げになっている条約も多いと、各国の環境相らが参加して24日までケニアのナイロビ(Nairobi)で開かれた国連(UN)の会合で多くの専門家が指摘した。

 世界の環境ガバナンス(統治)について協議されたこの会議では、世界的な環境保護体制の見直しが必要との認識で一致した。条約が乱立する現状についてある外交官は「航空機にパイロットがいない状態」と表現した。

 国連環境計画(United Nations Environment ProgrammeUNEP)の規模や影響力は、世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)や世界保健機関(World Health OrganizationWHO)に比べてかなり見劣りする。

 UNEPの2010年度の予算はわずか8300万ドル(約68億円)にすぎず、続々と登場する環境関連の条約への影響力はほとんどない。

■乱立する条約、「条約間格差」も

 環境関連の条約は500以上存在するとみられるが、UNEPのアヒム・シュタイナー(Achim Steiner)事務局長は、正確な数は誰も把握していないのではないかと言う。

 その多くはブラジルのリオデジャネイロ(Rio de Janeiro)で「国連環境開発会議(地球サミット)」が開催された1992年に以降に結ばれたものだ。条約ごとに事務局が設立されているが、事務局間の連携はほとんどない。

 現在では無数の法体系が分厚い網のように複雑にはりめぐらされ、専門家でさえ理解するのが難しい状態になっているという。1992年から2007年の間に18の国際条約のもとに540回の会議が行われ、5000以上の決定が下された。こうした状況に開発途上国からは、対応しきれないとの声が上がり始めている。

 ナイロビでの環境会合に参加した専門家の1人は、「化学製品に関する規制1つをとっても、主な条約だけで3つある。この3条約を統合するのではなく、単に共通の枠組みの中に位置づけるという合意に達するだけで5年もかかった」とため息をついた。

 ばらばらに存在する各条約は決して対等ではない。例えば1992年に採択された「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)」には、1000億ドル(約8兆2000億円)の資金がたやすく集まった。しかしその2年後に採択された「砂漠化対処条約(UNCCD)」は資金集めに苦戦を強いられた。ある外交関係者は、「貧しい国の条約だから誰も気にかけない」と言う。

■「世界環境機関」設立を推す独仏、米中露印などは消極的

 ナイロビでの環境会合では総論で一致したが、ばらばらな制度を調和させるための協議は何年も前から行き詰まったままだ。

 欧州連合(EU)を後ろ盾に持つフランスとドイツは、あらためて「世界環境機関」の設立に向けてロビー活動を行っている。フランスのナタリー・コシュスコモリゼ(Nathalie Kosciusko-Morizet)エコロジー担当相は、「UNEPを強化して、地球規模で機能する機関にしたい」と語る。

 一方、米国や中国、ロシア、インドなどは、政治的・経済的な思惑から現在のところこの問題について積極的な発言はしていない。ナイロビでの会合は24日、2012年6月にリオデジャネイロで開催予定の地球サミットでの合意も視野に入れ、各国がこの問題を持ち帰って検討することを呼びかけて閉幕した。(c)AFP