「過酷な仕事」覚悟でシー・シェパードに参加する人たち
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【2月9日 AFP】業務内容の説明は「給与なし、長時間勤務、重労働、危険な職場環境、悪天候多し」と、人を寄せ付けないものがある。特に職場環境は過酷で、ある日誰かが「勤務中」に死ぬのではないかと当局に心配されている。
しかし、そびえ立つ波やうなる風、そして南極海で活動する日本の調査捕鯨船に立ち向かう覚悟をジョージー・ディックス(Georgie Dicks)さん(23)が持っていなかったら、彼女は活動家として志願していなかっただろう。
「いつだって前線で命をはっているし、それができないのなら、ここにいるべきじゃないのよ」と、ディックスさんは「スティーブ・アーウィン(Steve Irwin)」号の船上でAFPの取材に語った。スティーブ・アーウィン号は米国の環境保護団体シー・シェパード(Sea Shepherd)の抗議船だ。
■「クジラを救いたい」と集まる毎年1000人の人びと
クジラたちの生涯を日本の食卓で終わらせまいと、シー・シェパードの抗議船には毎年およそ1000人の応募がある。
この抗議船の乗組員になるということは、地球上で最も荒涼とした地域で数か月間を過ごすということだ。しかし一方で、一生に一度の経験をする機会ともいえる。「不平不満を言う人、ふかふかのマットレスが好きな人、それに弱虫」は応募しないでいただきたい、というのがシー・シェパードの姿勢だ。
ディックスさんは、これまでの活動を振り返り、南極海の流氷を砕いて船が進むときや、1月初めに日本の調査捕鯨船と衝突したときなどが最もスリリングだったと語る。
「ええ、とんでもなく怖かったわ」とディックスさんは認める。「でもね、人は物事を受け入れていくものよ。あれは、とっても緊張した1日だったわ。とても興奮して、スリリングで、クジラたちを救うためにわたしが実際に何かしているんだって感じたわ」
ディックスさんは、商業捕鯨の一時停止(モラトリアム)の抜け穴を利用して「科学的調査」の名目でクジラたちが殺されていくのを防ぐことができるならば、それにともなう危険は必要な代償だと語る。「クジラを救うこと、それはわたしが6歳のころからやりたかったことよ」。ディックスさんは甲板員として、ほとんどの時間を船の清掃に費やしている。
■「惑星を守るため」過酷な衝突に身を捧げる
シー・シェパードは捕鯨船に激しく衝突することで知られている。ポール・ワトソン(Paul Watson)船長の下、過去7度の遠征で活動家たちは、クジラと銛(もり)の間にわが身を何度も投げ出してきた。
日本の捕鯨船に対するシー・シェパードの妨害活動が激化したのは2010年1月。SSの超高速抗議船「アディ・ギル(Ady Gil)」号が、日本の調査捕鯨団の監視船「第2昭南丸(Shonan Maru II)」と衝突し、沈没してからだ。
南極海でのこうした激しい抗議行動中に死者が出る危険性もあると、当局では警告してきた。
スティーブ・アーウィン号に乗った別のボランティア、ダグ・オニール(Doug O'Neil)さん(37)は「危険があることは承知の上でここまで来た。危険な仕事であることも分かっている。それでも、自分がしていることに幸せを感じるよ。子どもたちとその未来のためにこの惑星ってものを守りたいんだ」語る。
オニールさんはIT技術者としてのスキルを活用して、スティーブ・アーウィン号の広報を担当している。「何かしなくちゃいけない、と思って応募したんだ。できることはなんでもやりたい」と語る。
■「直接行動が最も有効」と協力
ケビン・マギンティ(Kevin McGinty)さん(47)は、SSの抗議船「ゴジラ(Gojira)」に乗るボランティアだ。「こいつは凶暴な船だよ」と、真っ黒な船体のゴジラを前にマギンティさんは語る。「悪天候なんかものともしないね」
マギンティさんはオーストラリア西部で電気工事の請負業を小さく営んでいる。港に停泊中のSS船舶の電気修理を行ったのがきっかけで、今年の抗議活動に参加したという。
SSの活動は本来オーストラリア政府がやるべきことだ、マギンティさんは思っている。「直接行動を戦略とするシー・シェパードは、地上で最も有効な保護団体だと思うね」と語った。
■「突然、受けた啓示」
だが、マギンティさんでさえ、3か月にも及ぶことのある活動の過酷な条件には苦笑いする。「無給できつい環境で働きたいなら、ここが絶好の場所だよ」
ディックスさんも不自由に思うことがあると漏らす。果物や野菜が食べられなかったり、風速40ノットの風や荒れた天気はつらいときもあるという。けれども、SSへの活動を通じて決して忘れられない瞬間を体験した、と語る。
冷たさが心地よいある晴れた日、船が氷を砕きながら氷山を進んでいるとき、ナガスクジラとザトウクジラの群れが、急浮上してきたという。
「調査船が水平線の遠くに見えていて、とても奇妙な瞬間だった」とディックスさんは振り返る。「辺り一帯にあの美しい動物たちがいるのを見て、あの調査船の人びとのクジラに対する考え方と、わたしたちのクジラに対する考えが、まるで異なっていることに気づいて……突然、啓示を受けた瞬間だったわ」(c)AFP/Madeleine Coorey
しかし、そびえ立つ波やうなる風、そして南極海で活動する日本の調査捕鯨船に立ち向かう覚悟をジョージー・ディックス(Georgie Dicks)さん(23)が持っていなかったら、彼女は活動家として志願していなかっただろう。
「いつだって前線で命をはっているし、それができないのなら、ここにいるべきじゃないのよ」と、ディックスさんは「スティーブ・アーウィン(Steve Irwin)」号の船上でAFPの取材に語った。スティーブ・アーウィン号は米国の環境保護団体シー・シェパード(Sea Shepherd)の抗議船だ。
■「クジラを救いたい」と集まる毎年1000人の人びと
クジラたちの生涯を日本の食卓で終わらせまいと、シー・シェパードの抗議船には毎年およそ1000人の応募がある。
この抗議船の乗組員になるということは、地球上で最も荒涼とした地域で数か月間を過ごすということだ。しかし一方で、一生に一度の経験をする機会ともいえる。「不平不満を言う人、ふかふかのマットレスが好きな人、それに弱虫」は応募しないでいただきたい、というのがシー・シェパードの姿勢だ。
ディックスさんは、これまでの活動を振り返り、南極海の流氷を砕いて船が進むときや、1月初めに日本の調査捕鯨船と衝突したときなどが最もスリリングだったと語る。
「ええ、とんでもなく怖かったわ」とディックスさんは認める。「でもね、人は物事を受け入れていくものよ。あれは、とっても緊張した1日だったわ。とても興奮して、スリリングで、クジラたちを救うためにわたしが実際に何かしているんだって感じたわ」
ディックスさんは、商業捕鯨の一時停止(モラトリアム)の抜け穴を利用して「科学的調査」の名目でクジラたちが殺されていくのを防ぐことができるならば、それにともなう危険は必要な代償だと語る。「クジラを救うこと、それはわたしが6歳のころからやりたかったことよ」。ディックスさんは甲板員として、ほとんどの時間を船の清掃に費やしている。
■「惑星を守るため」過酷な衝突に身を捧げる
シー・シェパードは捕鯨船に激しく衝突することで知られている。ポール・ワトソン(Paul Watson)船長の下、過去7度の遠征で活動家たちは、クジラと銛(もり)の間にわが身を何度も投げ出してきた。
日本の捕鯨船に対するシー・シェパードの妨害活動が激化したのは2010年1月。SSの超高速抗議船「アディ・ギル(Ady Gil)」号が、日本の調査捕鯨団の監視船「第2昭南丸(Shonan Maru II)」と衝突し、沈没してからだ。
南極海でのこうした激しい抗議行動中に死者が出る危険性もあると、当局では警告してきた。
スティーブ・アーウィン号に乗った別のボランティア、ダグ・オニール(Doug O'Neil)さん(37)は「危険があることは承知の上でここまで来た。危険な仕事であることも分かっている。それでも、自分がしていることに幸せを感じるよ。子どもたちとその未来のためにこの惑星ってものを守りたいんだ」語る。
オニールさんはIT技術者としてのスキルを活用して、スティーブ・アーウィン号の広報を担当している。「何かしなくちゃいけない、と思って応募したんだ。できることはなんでもやりたい」と語る。
■「直接行動が最も有効」と協力
ケビン・マギンティ(Kevin McGinty)さん(47)は、SSの抗議船「ゴジラ(Gojira)」に乗るボランティアだ。「こいつは凶暴な船だよ」と、真っ黒な船体のゴジラを前にマギンティさんは語る。「悪天候なんかものともしないね」
マギンティさんはオーストラリア西部で電気工事の請負業を小さく営んでいる。港に停泊中のSS船舶の電気修理を行ったのがきっかけで、今年の抗議活動に参加したという。
SSの活動は本来オーストラリア政府がやるべきことだ、マギンティさんは思っている。「直接行動を戦略とするシー・シェパードは、地上で最も有効な保護団体だと思うね」と語った。
■「突然、受けた啓示」
だが、マギンティさんでさえ、3か月にも及ぶことのある活動の過酷な条件には苦笑いする。「無給できつい環境で働きたいなら、ここが絶好の場所だよ」
ディックスさんも不自由に思うことがあると漏らす。果物や野菜が食べられなかったり、風速40ノットの風や荒れた天気はつらいときもあるという。けれども、SSへの活動を通じて決して忘れられない瞬間を体験した、と語る。
冷たさが心地よいある晴れた日、船が氷を砕きながら氷山を進んでいるとき、ナガスクジラとザトウクジラの群れが、急浮上してきたという。
「調査船が水平線の遠くに見えていて、とても奇妙な瞬間だった」とディックスさんは振り返る。「辺り一帯にあの美しい動物たちがいるのを見て、あの調査船の人びとのクジラに対する考え方と、わたしたちのクジラに対する考えが、まるで異なっていることに気づいて……突然、啓示を受けた瞬間だったわ」(c)AFP/Madeleine Coorey