【1月12日 AFP】世界で最も古くから生息する動物の1つとされるオサガメの生態を衛星位置追跡装置で調べた研究が5日、学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」に掲載された。オサガメたちが大西洋を横断する様子が初めて明らかになった。

 研究はイングランド南西部のエクセター大(University of Exeter)の生物学者たちが行った。

 研究チームは、アフリカ中西部ガボンにある繁殖地で25匹のメスのオサガメに小型の追跡装置をとりつけ、その後5年間の行動を追跡し、大西洋に3つの回遊ルートがあることをつきとめた。

■大西洋に3つのルート

 研究によると、オサガメはえさの豊富な海流を追って移動し、2~5年後にガボンに戻って繁殖する。回遊ルートの1つは、アフリカ中部とブラジルの間の大西洋中部に環状の回遊域を形成した。別のルートは大西洋をほぼ一直線に横断してブラジル沿岸に到着した。このルートの距離は7563キロにおよんだ。もう1つのルートははるかに南下し、アフリカ南端の喜望峰(Cape of Good Hope)より南に達していた。

「オサガメに対する研究は非常に多かったが、大西洋南部の回遊ルートはこれまで分かっていなかった」と、エクセター大環境保護センターのマシュー・ウィット(Matthew Witt)氏は述べる。

 それぞれの回遊ルートを移動するオサガメの数は毎年変動するが、その理由はまだ明らかになっていない。

■漁船の運航ルートとも交差

 また、オサガメの回遊ルートがトロール漁船の運航ルートとしばしば交差していることも分かった。これがトロール漁でオサガメが混獲される原因だとみられる。

 ウィット氏とともに研究に参加したブレンダン・ゴッドリー(Brendan Godley)氏は「回遊ルートが判明したことで、少なくとも11の国と遠洋漁船もオサガメの保護活動に関与すべきことが分かった」と述べる。

 オサガメは世界最大のカメで、最も深く潜水し、回遊距離も最長。最大で体長は約2メートルに達し、体重は900キロを超える。

 オサガメの大西洋での生息数は安定しているが、太平洋では驚くほど減少した。太平洋での減少は、トロール漁船の混獲と繁殖地となる沿岸が開発されたことが原因とされる。(c)AFP