【12月27日 AFP】サイの角の闇取引の活発化により、南アフリカではハイテクを駆使した密猟が横行しており、サイを絶滅から救うための活動を脅かしている。

 世界のサイの個体数は推定2万5000頭だが、うち70%以上が南アフリカに生息している。

 アフリカでは、19~20世紀に狩猟により激減したクロサイとシロサイの個体数を回復するため、国立公園を設置したり取締りを強化するなどの保護活動が行われてきた。これが功を奏し、一時期は絶滅したと考えられていたミナミシロサイが現在は1万7500頭まで回復。クロサイも4200頭にまで回復した。

 だが現在、南アフリカのサイは絶滅の危険にさらされている。世界自然保護基金(World Wildlife FundWWF)によると、今年密猟されたサイは316頭で、昨年の122頭から大幅に増加した。およそ1日に1頭が密猟されている計算だ。

■密猟が増加した理由

 WWFの担当者は、密猟急増の背景には「高度に組織化された犯罪組織」の存在があると指摘する。密猟は夜間行われるが、暗視装置や麻酔銃のほか、ヘリコプターやサイレンサー(消音装置)も使用されているという。

 また、サイの角は、ワシントン条約(Convention on International Trade in Endangered SpeciesCITES)のもとで取引が禁止されているにもかかわらず、アジアでは伝統薬としての需要が依然として高く、密猟横行の要因となっている。中国ではサイの角の粉末が解熱剤として珍重されており、1本7万ドル(約580万円)で取引されることもある。

 ベトナムでは最近、サイの角の粉末を服用するとがんが治るという迷信が広まっており、昨今の経済成長とも相まって、サイの密猟を後押ししているとの報告もある。

 南ア政府は10月、密猟取締りのための野生動物犯罪捜査班を立ち上げた。公園側も、サイの角をあらかじめ切り取るなどの対策を行っている。

 だが、ある野生動物保護活動家は、「南アフリカでの取締り強化は、密猟者をほかの地域に移動させているだけかもしれない」と危惧(きぐ)している。(c)AFP/Joshua Howat Berger