【11月9日 AFP】ピーターラビットの絵本からそのまま飛び出してきたようなネズミが、ピンク色の鼻先で地面をくんくんとかぎ回っている。ベルギーのNGO「APOPO」が地雷探知訓練を施しているところだ。

 タンザニアのモロゴロ(Morogoro)で、「訓練場」をひょこひょこ歩いている生後2か月のメスのネズミ、バベット(Babette)。胸にはハーネスを装着されており、後ろをついて歩く2人の訓練士がバベットにまっすぐに歩く練習をさせている。

 軽量で、鋭い嗅覚(きゅうかく)を持ち、餌で容易に動機付けすることができるアフリカオニネズミは地震探知にうってつけだと考えたAPOPOは、ここタンザニアで訓練プロジェクトを立ち上げた。ネズミはイヌよりもはるかに訓練がしやすいという。

 ネズミは、地雷に含まれるTNTをかぎ分けられるよう訓練される。正しくかぎ分けられると、訓練士はご褒美のバナナを与える。このようにして、TNTを正しく識別できたらご褒美がもらえると学習させていく。

 訓練は9か月間と骨が折れるものだが、現場に出たネズミたちは大きな実績を挙げている。200平方メートルの地雷原の無害化には人間2人で丸1日かかるが、ネズミ2匹が加われば2時間で完了するという。まだ多数の地雷が埋まっている隣国モザンビークで、彼らが地雷の完全撤去に貢献した面積は約200万平方メートルに及ぶという。
 
■結核菌の検出でも威力を発揮

 一方、モロゴロの研究所では、別のネズミが、喀痰(かくたん)の検体から結核の有無を見極めるための訓練を受けている。

 研究者が見守る中、ネズミが入れられた長方形のケージに10本の検体が差し込まれる。ネズミはそれぞれを嗅ぎ、結核菌の「におい」がしたものを引っかく。

 訓練された1匹のネズミが70本の標本をかいで判定するのには10分もかからない。APOPOによると、顕微鏡検査で陰性と判定されながらも、ネズミが陽性と判断し、再検査したところ陽性だったというケースも多い。ネズミを使った結核菌検査が始まってからの3年間でそうしたケースは1500例以上にのぼり、ネズミたちが協力した病院の結核検出成功率は40%も向上したという。

 結核は、HIV患者においては最も致死率の高い日和見疾患だ。タンザニアでは結核で亡くなった人のうち生前に結核と診断されていた人は半数にも満たず、隠れた結核感染者は1年に1人あたり最高15人を感染させている。

■「ネズミは害獣ではない」

 タンザニアでは、ネズミは病気をまき散らし作物を荒らす害獣と見なされている。APOPOの関係者は、「そのような悪いイメージを変えたいと思っている。ネズミは極めて友好的で、とても賢く、好ましい動物だ」と話した。APOPOは、地雷や結核菌の検知に活躍しているネズミたちを「ヒーローラット」と呼んでいる。

 今後は麻薬検知や災害時の生存者捜索などができるヒーローラットを養成したいとしている。(c)AFP/Otto Bakano

【参考】APOPOのサイト(英語)