【11月9日 AFP】尿を買い取る――。南アフリカのダーバン(Durban)市が水を一滴も使用しない「ドライトイレ」普及促進のために始めた方策だ。

 衛生状況の改善と歳出削減のため、ダーバン市はこれまでに家の空き地にドライトイレ約9万個を設置した。今後、500個のトイレに尿を集めるための20リットルの容器を設置する方針だ。尿はリンやカリウムが豊富で、肥料への転用が可能だ。

 市の職員はトイレにたまった尿を週1回集め、各家庭に約30ランド(約350円)を支払う。国民の43%が週2ドル(約160円)以下で生活していることを考えれば、少なくない額だ。

 現在、トイレのタンクの内容物は各家庭が処理している。たいていの場合、トイレの周辺にまかれるだけだ。

 プロジェクトを支援するスイスの連邦水質研究所(Eawag)と慈善財団ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団(Bill and Melinda Gates Foundation)がプロジェクトの手法を考案し、すでに支持も得ている。

 ダーバン市の水・衛生責任者、ネイル・マクロード(Neil MacLeod)氏は「トイレでお金を稼げるのなら、市民もトイレを使いたがるだろう」と語っている。

■ドライトイレの問題点

 多くの人たちはドライトイレを使用したがらない。使用のたびに砂をかけなければならない上に、尿と糞便は別々の場所に排出しなければならない。タンクも定期的に空にしなければならない。そのような理由から、人びとはお金が貯まるとすぐに浄化槽を買い、ドライトイレを使わなくなってしまう。

 南アの水・衛生コンサルタント、Pierre-Yves Oger氏は、糞尿から作られた肥料を地元で使う地方部ではドライトイレは浸透しているが、都市部では、(糞尿の)排出者と使用者が分断されており、心理的な障壁を克服するのが難しいと指摘する。

 ドライトイレ・プロジェクトを大々的に推進する都市がほとんどない理由はここにある。

 ダーバン市は2002年、コレラの流行を機に衛生の欠如が浮き彫りになり、プロジェクトを開始した。当時、市民400万人の4分の1がトイレを使っていなかった。

 完全な公衆衛生システムを導入することなく、節水を推進するため、ダーバン市はドライトイレを選択した。同市はそれが正しい選択だったと信じている。

 プロジェクトを主導するテディー・ゴーンデン(Teddy Gounden)氏は「南アは水ストレスを受けた国だ」とし、「飲料水の需要が増加するなかで、貴重な水をトイレの下水に流すことはできない」と語った。(c)AFP/Marine Veith