【9月28日 AFP】フィリピンに独裁政権を敷いた故フェルディナンド・マルコス(Ferdinand Marcos)元大統領の好物だったことから、「プレジデント・フィッシュ(大統領の魚)」と呼ばれるようになった高級魚が、絶滅の危機にひんしている。

 この魚、カワボラは乱獲によって激減した。5年間の禁漁を求めているフィリピン漁業水産資源局(Philippine Bureau of Fisheries and Aquatic Resoruces)の高官は25日、「一時的にでも漁獲を制限しないと、絶滅してしまう」と危機感を示した。

 フィリピンで「ルドン」や「バナク」とも呼ばれているカワボラが生息している国は少なく、フィリピンでも北部の2、3の河川にしか住んでいない。1キロ当たり5000ペソ(約9600円)程度で売られており、フィリピンでは富裕層しか買うことができない、最も高級な魚とされる。

 しかし高値で売れるため、産卵期でも漁が行われ、繁殖できるまで成長できる個体が減ってしまった。

 本来は体長が32.5センチ程度にまでなるが、現在捕れている個体はずっと小さい。重さでは数年前には2.5キロ程度だったが、現在はわずか250グラムのものしか捕れていない。

 1965年から86年までの大半を軍事政権で支配したマルコス大統領は、このカワボラの産地であるフィリピン北部の出身で、常に1年分のカワボラを確保していたと言われる。高官によると「独特の芳香と味を好む人が多く」、前もって漁師に金を払って捕らせる者までいるほどで、「いい値段がつくので、漁師たちを止めることはできない」と言う。

 同庁では養殖を試みているほか、絶滅を防ぐための啓蒙活動を行っている。(c)AFP