【8月25日 AFP】米メキシコ湾(Gulf of Mexico)で発見された新種のバクテリアが、水温の冷たい深海で予想よりも早く原油を分解しているとの研究結果が24日、米科学誌サイエンス(Science)電子版に掲載された。この新種のバクテリアは5度の低水温でも生存し、原油の生分解が早いだけでなく、生物の生命維持に必要な水中の酸素を使い切ることなく分解できるという。

 米国のローレンス・バークレー国立研究所(Berkeley LabLawrence Berkeley National Laboratory)の微生物生態学者、テリー・へーゼン(Terry Hazen)氏率いる研究チームは、5月に英エネルギー大手BPの油井から16キロの範囲にわたって海底1000~1200メートル付近を漂う原油を分析した。

 BPの採掘施設の爆発事故により発生した米国史上最悪の原油流出事故は、事故発生から3か月近くたった7月15日にようやく油井が封鎖された。また、米政府研究者は、流出原油400万バレルのうち74%が蒸発、分解、回収されたと報告している。

 研究チームは、冷たい深海での原油の分解が予想よりも早かったことについて、「生分解しやすい揮発性成分が多いというメキシコ湾の軽質油の特徴」を要因の1つとしてあげた。また、BPが海底1500メートルの流出現場で使用した化学分散剤「Corexit」が原油を細かい粒子に分解したことや、流出した原油の濃度が全体としては低かったことなども寄与した可能性があると述べ、「さらに、メキシコ湾の海底で頻繁に発生する原油の自然流出が、長期間をかけて海底の微生物生態系に適応をもたらし、そのことが炭化水素分解の速度を上げた可能性もある」とした。

 しかし、20日に同じくサイエンス誌に掲載された米ウッズホール海洋研究所(Woods Hole Oceanographic Institute)の論文では、メキシコ湾の冷たい水では原油の分解速度が遅くなるとしていた。また米ジョージア大学(University of Georgia)が1週間前に発表した論文でも、メキシコ湾に流出した現有のうち80%が今も滞留し、分解速度も遅いために周辺の生態系に大きな脅威となっていると指摘しており、今回の研究とは相反する内容だった。(c)AFP


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