【8月24日 AFP】ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)首相が23日、北極海(Arctic Ocean)上の島にある露独共同研究所を視察し、研究者たちと温暖化問題について意見を交わした。

 極東ヤクチア(Yakutia)地方・レナ川(Lena River)河口のサモイロブスキー島(Samoilovsky Island)に設けられた研究所を、ヘリコプターで訪れたプーチン氏は、3000年前の氷やマンモスの骨などを鑑賞したあと、研究者らの小屋に招かれ、お茶を飲みながら地球温暖化について研究者らと積極的に意見を交わした。

■「気候変動の原因は地球か、人間か」、プーチン首相が問題提起

 プーチン氏は、「気候変動はガスやメタンを吐き出す地球自身の活動が原因なのか、それとも人間の活動が原因なのだろうか」との疑問を、研究者たちに投げかけた。また、「マンモスの絶滅は1万年前に始まった。これは、温暖化や海面上昇、草地の減少によるもので、人間とは無関係の現象ではないか」と指摘した。

 現在のシベリア(Siberia)地方に生息したマンモスは紀元前1万年ごろから絶滅の一途をたどり始めた。地球の温暖化と人類によるマンモス狩りが主な原因と考えられている。

 プーチン首相の疑問は、現在の温暖化は人的要因によるものとの科学的見地に一石を投じるものだ。

■独女性研究者が果敢に反論

 これに、果敢にもドイツの女性研究者が反論を試みた。「多種多様な燃料を燃やすことは、地球のメタン排出活動よりも、甚大な影響があるのです。現在、起きているような気候変動は過去にも例がなく、人類が大きな影響を与えていることは間違いないんです」

 プーチン氏は2003年にも、「2度から3度程度の温暖化は、ロシアにとっては望ましいことだ。毛皮のコートは必要なくなるし、農作物の生産も向上するだろう」と述べて、科学者らを驚かせている。

 ロシアは、大幅な二酸化炭素の排出量削減に前向きではないとして、環境学者らから批判されてきた。これに対し、ロシア側はかつてない規模での経済発展を犠牲にはできないと主張してきた。

 だが、今夏の猛暑は、穀物作付面積の約25%が焼失した森林火災や干ばつなど、ロシアに多大な被害をもたらした。農作物への損失額は、数十億ドル規模に上るとみられる。

■「どこに逃げたらいい?」と冗談も

 プーチン首相も、「森林火災によって気候変動の影響が深刻であることを認識した」と認めながらも、気候変動に対応するためマンモスが離島へ移住したことを例にあげ、「われわれは、どの島へ逃げたらよいのか、教えてもらえないかね」と冗談交じりにたずねた。

 プーチン首相が研究者たちと語り合う様子は、国営テレビで放映された。

 自称、動物愛好家のプーチン氏はこわもてイメージを和らげようと、ロシア各地でホッキョクグマやトラ、ヒョウと触れ合う姿をアピールしている。(c)AFP/Stuart Williams