【4月25日 AFP】オーストラリア環境省南極部の研究チームは、気候変動との闘いのなかで意外な要素を発見した。クジラの排泄物だ。

 クジラの排泄物の大部分は餌のオキアミからできたものだが、海洋植物にとって優れた肥料であることが分かったという。科学者のスティーブ・ニコル(Steve Nicol)氏は「オキアミは鉄分を豊富に含んでいる。クジラが排泄すると鉄分が海に還り、海水中の栄養分が増えて新たな食物連鎖が始まる」と説明する。

 この研究はクジラの数が増えると海中の植物が増え、その結果として海洋の二酸化炭素吸収量が増えることを示唆している。鉄分は藻などの海洋植物にとって不可欠の栄養素だが、南極海ではその濃度は低い。

 オーストラリアの南極気候・生態系共同研究センター(Antarctic Climate and Ecosystems Cooperative Research CentreACE CRC)の海洋化学者、アンドリュー・ボウイ(Andrew Bowie)氏によると世界の海洋の3分の1は鉄分の濃度が低い。クジラは1日に数トンのオキアミを食べ、おなかで赤褐色の液状にして海に戻している。

 ボウイ氏によると、科学者たちはクジラの排泄物が鉄分を含むことには確信を持っていたが、南極海の海水の約1000万倍というその高い濃度には驚いたという。(c)AFP