【4月14日 AFP】米カリフォルニア(California)州と韓国ソウル(Seoul)のすし店で提供されていた鯨肉のDNA調査を行った結果、日本の調査捕鯨によって捕獲されたものだったとの報告が、英国王立協会(Royal Society)の専門誌「バイオロジー・レターズ(Biology Letters)」に発表された。

 日本の調査捕鯨で捕獲したクジラの肉が国内で販売されたり、料理店で提供されていることは日本政府も認めている。しかしワシントン条約(CITES)の附属書Ⅰで鯨類の商業目的の国際取引は禁じられており、輸出はできないことになっている。

 今回報告したチームは科学者のほか、前年カリフォルニア(California)州の高級すし店「ザ・ハンプ(The Hump)」で客を装って潜伏調査を行い鯨肉を入手した捕鯨反対運動の活動家や、日本のイルカ漁を批判した内容で、今年のアカデミー賞(Academy Awards)のドキュメンタリー賞を受賞した米映画『ザ・コーヴ(The Cove)』のルイ・シホヨス(Louie Psihoyos)監督も加わっている。

■DNA配列で確認

「ザ・ハンプ」はメディアで大きく取り上げられ、地元当局の調査も受けて閉店したが、調査チームが同店で入手した鯨肉のDNA配列を調べたところ、07年と08年に日本で購入したイワシクジラのものと同一であることが確認された。

 報告の主筆者であるオレゴン州立大学(Oregon State University)海洋哺乳類研究所(Marine Mammal Institute)、スコット・ベーカー(Scott Baker)教授の指摘によると「(1986年に採択された)商業捕鯨モラトリアム以降、商取引を通じて入手できるイワシクジラ肉の供給源は日本以外にない」

 チームは韓国のソウルでも同様の調査を09年の6月と9月の2回にわたって行い、計13種類の鯨肉を購入した。このうち4種類は南極海のミンククジラ1頭から、4種類はイワシクジラ1頭、3種類は北太平洋のミンククジラ1頭、1種類はナガスクジラ1頭、残る1種類はハナゴンドウ1頭から取ったものであることが分かった。

 さらにこのナガスクジラのDNAは、07年に日本の市場で購入されたものと一致した。

■日本が持つクジラのDNA情報の利用を要請

「商業捕鯨モラトリアム以降、鯨肉製品の国際間取引はなくなったと考えられてきた。しかし07年の日本と09年の韓国で販売されていた鯨肉が、同一の個体からとれたものだったということは違法な鯨肉貿易が依然として行われていることを示唆している」とベーカー教授はプレスリリースで述べ、さらに次のように問い掛けている。

「同様に、南極海のミンククジラは韓国周辺の海域には生息していないが、問題視されている日本の調査捕鯨では捕獲されている。ソウルの料理店で提供されている事実をどう説明すべきだろうか」

 ベーカー教授は鯨肉の違法貿易を追跡するため、日本の捕鯨船が捕獲したクジラのDNA情報を利用させてくれるよう、日本側に協力を要請したところだと発表している。(c)AFP