【3月16日 AFP】地球温暖化対策として海に鉄分をまくことが一部で検討されているが、この「海洋鉄肥沃化」は、致死性の高い神経毒を生産するプランクトンの成長を促すため、かえって害を及ぼす恐れがあるとする論文が、15日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。

 カナダ・ウェスタンオンタリオ大学(University of Western Ontario)の研究チームは、鉄分散布実験が行われている亜北極帯の北太平洋の外洋で海水を採取し、分析した。

 その結果、鉄肥沃化は、神経毒の成分であるドーモイ酸を生産する植物プランクトン「ドウモイ酸産生被疑プランクトン」の成長を促進する可能性があることがわかった。 

 このプランクトンを摂取した貝やカニを人間が食べると、記憶喪失性貝毒(ASP)に当たり、その名の通り、短期的または永久的な記憶喪失などの神経症状を引き起こし、最悪の場合は死に至る。

 これまで、鉄肥沃化の実験は、炭素循環への影響に主眼が置かれ、地球工学上の生態学的影響については考慮されてこなかった。(c)AFP/Karin Zeitvogel