【1月19日 AFP】国連(UN)の気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate ChangeIPCC)のラジェンドラ・パチャウリ(Rajendra Pachauri)議長は18日、専門家から「誤り」との指摘があった2007年の報告書におけるヒマラヤ氷河の解氷速度について見直すことを明らかにした。

 IPCCの大きな成果である2007年2月の第4次評価報告書(Fourth Assessment Report)に記載された「ヒマラヤ氷河が2035年までに消滅する」との予測については、前週末の英紙サンデー・タイムズ(Sunday Times)が、その出所に疑問を呈する記事を掲載していた。

 記事によると、この予測の出所となったのは世界自然保護基金(World Wide Fund for NatureWWF)であり、同基金は1999年の英科学誌「ニュー・サイエンティスト(New Scientist)」に掲載されたインド人氷河学者のインタビュー内にこの予測が言及されていたと主張している。

 だが、同紙によると、こうした予測がニュー・サイエンティストに掲載された形跡はないという。

 また、第4次評価報告書の作成に関わったオーストリア・インスブルック大学(University of Innsbruck)の氷河学者、Georg Kaser氏はAFPに対し、発表から数か月前の2006年末にこの予測が「重大な誤り」であることに気付き、同僚らに伝えていたことを明らかにした。

 同氏によると、「ヒマラヤ氷河が2035年までに消滅する」には、気温上昇を予想値より2~3倍高い12度以上に設定する必要があったという。こうした警告はなぜ見過ごされたのだろうか。Kaser氏は「報告書に携わった専門家集団は氷河については何も知らなかったから」と答えた。

 ヒマラヤ氷河の溶解は、南アジアにとっては重大な意味を持つ。洪水または水ストレスの影響を数億人が被ると見られるためだ。インドのジャイラム・ラメシュ(Jairam Ramesh)環境相は、氷河に関する予測を見直すようIPCCに繰り返し求めていた。(c)AFP/Marlowe Hood