【12月21日 AFP】世界の海洋は、汚染のせいでますます「騒々しく」なっており、クジラやイルカなどの海洋生物に悪影響が及ぶ可能性があるとする論文が、20日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表された。

 海中の低周波音は、雨、波、海洋生物といった自然の要因のほかに、ソナーや船舶、工事などの人間活動によっても発生する。これらの音は主に、海水の粘性や海水に溶け込んだ特定の化学物質に吸収される。

■海洋の酸性化で音の吸収量が減少

 だが、こうした化学物質の濃度は、二酸化炭素濃度の上昇による海の酸性化で低下してきているという。そして二酸化炭素濃度の上昇をもたらしているのが、海運業などの人間活動だ。船舶の数は過去40年でほぼ倍増したという。

 米科学者らは今回、酸性度の上昇についてのモデル化によるシミュレーションで、高緯度の海洋では2100年までに海水による音の吸収が最大60%減少する可能性があることを発見した。 

 海の酸性度上昇による負の影響はこれまで、サンゴ礁などにおける石灰化率の減少ばかりが指摘されてきた。

■クジラの座礁など海洋生物に影響

 しかし研究者らは、温室効果ガスの増加に起因する地球温暖化で、海が吸収する特定の周波数音が減る可能性を指摘。高レベルの低周波音は、海洋生物の行動上および生物学的に数多くの影響を及ぼすと警告している。

 また、こうした影響の一例として、クジラなどのほ乳動物の組織損傷や大量座礁、中周波数帯の強力なソナーを使用する軍事演習に関連したイルカの一時的な聴力障害などがあるとしている。(c)AFP