温暖化で「溶けるヒマラヤ」、アジア13億人に脅威
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【12月8日 AFP】(写真追加)アジアに住む約13億人が生活水を頼る大規模河川9本がヒマラヤ山脈を源流としているが、その水源となっているヒマラヤの氷河が、気候温暖化の影響で危機的なスピードで融解していると専門家らが警告している。
ヒマラヤ山脈の氷河はパキスタン、インド、中国、ネパール、ブータンをまたいで全長2400キロにわたる。この地域の気温は過去30年間、10年ごとに0.15~0.6度の幅で上昇してきた。その結果、氷河の融解は危機的な勢いで加速している。
■数十年で消滅の予測も
デンマーク・コペンハーゲン(Copenhagen)での国連気候変動枠組条約(UN Framework Convention on Climate Change、UNFCCC)第15回締約国会議(COP15)の開幕にあわせ、環境運動家らは数十年以内にヒマラヤ氷河が完全に消滅してしまう恐れがあると警告している。
世界自然保護基金(World Wide Fund for Nature、WWF)のプロジェクト、「クライメート・フォー・ライフ(A Climate For Life、生命のための気候)」を率いるプラシャント・シン(Prashant Singh)氏は「科学者らは40年でヒマラヤのほぼすべての氷河が消えると予測している」と語る。一方、国連(UN)の気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)は、2035年までに消滅の脅威があるとさえ発表している。
シン氏は、COP15が目指す京都議定書後の地球温暖化対策の新たな枠組みに関する合意の内容が、ヒマラヤ水系に頼る貧困層の多い数億人の運命を大きく左右すると強調する。
■温暖化の影響はすでに出現
地球温暖化の影響はすでに同地域に現れている。ネパールとブータンでは融解した大量の水により巨大な湖が生まれている。決壊すれば、下流の住民に大規模な被害が出る。
COP15期間中に開催される「登頂者サミット」に出席するネパール人登山家で環境活動家でもあるダワ・スティーブン・シェルパ(Dawa Steven Sherpa)さんは、2007年の登山中にエベレスト(Everest)のベース・キャンプ上にあるクンブ(Khumbu)氷瀑の一部が崩壊したのを見て、気候変動に強い警戒感を持つようになった。崩壊の数分前、シェルパさんは氷瀑を歩いていた。
「毎回山へ行くたびに、年配のシェルパたちが『今年の夏はこれまでで一番暑い』と言っている。最初はこれでは登山が危なくなると思っていたが今は、もっとずっと大きな問題であることに気づいた。氷河が溶けてできた湖が決壊すれば、そのあたりにある村ごとすべて消えてしまうだろう」(c)AFP/Claire Cozens