【12月6日 AFP】塩分濃度が世界で最も高いこと、そして湖面の海抜が世界で最も低いことで知られるアラビア半島の死海(Dead Sea)。この塩水湖の水位は年々低下している。

 1960年にマイナス395メートルだった湖面の海抜は現在はマイナス422メートルとなるなど、湖面は年平均で約1メートルずつ下がっている。場所によっては水際が1キロ以上も沖の方に後退した場所もある。このまま縮小が続けば2050年までに死海が消滅する可能性があるとの試算もある。

■ヨルダン川から流れ込む水が激減

 湖面低下はイスラエル、ヨルダン、シリアなどの沿岸国が死海に流れ込むヨルダン川(Jordan River)の水を大量に利用し始めた1960年代に始まった。数十年間にわたり沿岸3か国はヨルダン川を流れる水の95%程度を取水してきた。

 流量自体も減っている。中東の環境保護団体「Friends of the Earth Middle East」(FoEME)によると、この50年間で、かつて13億立方メートルを超えていたヨルダン川の年間流量は7000万立方メートルに激減した。

■紅海の水を引く巨大計画も難航

 イスラエル、パレスチナ自治区、ヨルダンは2005年、長さ200キロの運河を建設して紅海(Red Sea)から死海に紅海から年間20億立方メートルの海水を引く計画について大筋で合意した。しかし、現在は世界銀行(World Bank)の資金で2年間かけて予備調査を行っている段階だ。

 ヨルダンは9月、単独で約20億ドル(約1800億円)を費やして紅海の水を引くパイプラインを建設する計画に着手することを決めた。だが、政治的・経済的理由によりこの計画は容易ではないとある専門家は指摘する。この専門家によると、温暖化で降水量が減っていることも死海の湖面低下問題を一層悪化させているという。

■COP15で協力求める

 ヨルダンのハリド・イラニ(Khaled Irani)環境相は、国連気候変動枠組み条約(UN Framework Convention on Climate ChangeUNFCCC)第15回締約国会議(COP15)でこの問題を提起する意向だ。「この問題はヨルダンに大きな影響を与えている。死海を救うための人員や費用を分担するよう先進国に求めたい」と語っている。(c)AFP/Ahmad Khatib